塾講師等の労務の提供は非独立的なものと評価するのが相当
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:02/25/2014  提供元:21C・TFフォーラム



 教育機関等の講座等の請負や受験生の訪問指導等を行う法人が塾講師等に支払った金員の所得区分が争われた事件で東京地裁(八木一洋裁判長)は、塾講師基本契約書等に基づく法人のために労務提供の対価という性質を有するという判断から給与所得であると判示して、法人側の請求を棄却した。

 この事件は、教育機関等から講師による講義等、一般家庭から家庭教師による個人指導の業務を受託している法人が、教育機関等の講義や一般家庭で個人指導を行った者に支払った金員は給与所得に該当しないという判断から源泉徴収をせず、かつ課税仕入れに該当すると判断して消費税等の申告をしたのが発端になったもの。

 しかし原処分庁が、給与所得に該当することから消費税法上の課税仕入れにも該当しないとして申告内容を否認、源泉所得税の納税告知処分及び不納付加算税の賦課決定処分及び消費税等の過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたため、法人がその取消しを求めて提訴したという事案である。

 判決はまず給与所得の意義に触れ、最高裁昭和56年判決を引き合いに、同判決は給与所得に関する判断の枠組みを提示したもので、業務の遂行ないし労務の提供から生ずる所得が給与所得に該当するための必要要件を示したものではないと指摘した上で、塾講師基本契約書・家庭教師基本契約書から、塾講師・家庭教師は指導期間、指導回数、指導時間及び指導スケジュール等に従って法人に労務の提供をしているという事実関係を踏まえ、法人との契約に基づいて講義等及び個人指導等の単価を基礎に、業務に従事した時間数に応じた金員の支払いを受けていると認定した。

 そうした事実認定から、塾講師や家庭教師に支払われた金員は、法人のために労務の提供等をしたことの対価としての性質を有するものであることが明らかとも指摘。しかも、労務の提供等に当たって必要な費用を負担する義務も負っていないため、塾講師や家庭教師等の労務の提供等は自己の計算と危険によるものとはいい難く、非独立的なものと評価するのが相当であると判示して棄却している。

(2013.04.26東京地裁判決、平成22年(行コ)第308号)