相続に伴う出資持分の増加額に対するみなし贈与適用は妥当
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:04/24/2012  提供元:21C・TFフォーラム



 被相続人である医療法人の社員の相続に伴い、他の社員の出資持分の増加額に対するみなし贈与適用の可否判断が争われた事件で東京地裁(八木一洋裁判長)は、相続人である社員らは被相続人の死亡によって対価を支払わずに持分に係る増加額に相当する利益を受けていると認定した上で、相続税法9条が定めるみなし贈与の適用があると判断、納税者側の請求を斥ける判決を言い渡した。

 この事件は、被相続人である医療法人の社員が死亡したことに伴い社員たる資格を喪失したことが発端。その結果、原処分庁が相続に伴って他の社員の出資持分の価額が増加、対価を支払わすに増加益を受けたと認定して相続税法9条のいわゆるみなし贈与の適用があると判断、相続人である社員らに相続税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたため、相続人である社員らがその取消しを求めていたという事案である。

 相続人らは、1)医療法人は持分の定めのある社団ではない、2)出資持分の価額の増加についてはみなし贈与の適用はない、さらに3)原処分は権利の濫用に当たる――などと主張して、その取消しを求めていたわけだ。

 これに対して判決はまず、平成18年当時の医療法人に関する法制の下においては、社団である医療法人であって、持分の定めのある医療法人に当たると認定。その結果、被相続人である社員の死亡によって、相続人である他の社員らの持分の価額が増加、その増加額相当の利益を対価を支払わずに受けたのであるから、その金額対しては相続税法9条のみなし贈与が適用され、贈与によって取得したものとみなすのが相当と判断して、原処分には何ら違法性はないと言い渡している。

(2011.06.03東京地裁判決、平成22年(行ウ)第133号)