未確定債務で債務超過状態が著しいとは認められないと棄却
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:05/24/2016  提供元:21C・TFフォーラム



 株式の譲渡による所得が、資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難な状態における資産の譲渡に伴う所得に当たるか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、訴訟が譲渡時に継続中であり、未確定の債務をもって債務超過の状態が著しいと認めることはできないと指摘して、審査請求を棄却した。

 この事件は、審査請求人が、裁判所の発した株式譲渡命令によって株式を譲渡したところ、原処分庁がその株式の譲渡は法人が自己の株式を取得したものであるから、請求人の株式の譲渡による所得は配当所得に該当すると判断、所得税の決定処分及び無申告加算税の賦課決定処分を行ってきたのが発端。

 そこで請求人が、株式の譲渡による所得は、資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難である場合における資産の譲渡に伴う所得であることから、所得税法9条1項10号の非課税所得に該当すると主張して、原処分の全部取消しを求めて審査請求したという事案である。

 請求人は、資産を譲渡した時において、資産を譲渡することとなった原因と密接に関連した損害賠償請求訴訟が係属中であり、敗訴の可能性も高かったことからすれば、譲渡時の現況において、資産の譲渡による所得は、所得税法9条1項10号に規定する資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難な場合の資産の譲渡に伴う所得に該当する旨主張して、原処分の取消しを求めたわけだ。

 これに対して裁決は、訴訟は譲渡時において係属中であり、請求人の訴訟に係る債務についてはその存否も額も明らかではなく、債務として確定していないから、かかる未確定の債務をもって債務超過の状態が著しいと認めることはできないと指摘。また、課税しても結果的に徴収不能となることが明らかな場合に譲渡所得等を非課税とする法律の趣旨に照らしても、これを考慮することはできないというべきであるとも指摘、結局、請求人の主張には理由がないと判断して、審査請求を棄却した。

(2015.07.28国税不服審判所裁決)