譲渡制限等付株式の譲渡制限解除後の経済的利益は退職所得
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:01/07/2013  提供元:21C・TFフォーラム



 退職後に勤務先の親会社から付与された譲渡制限等付株式の譲渡制限が解除されたことに伴う経済的利益が退職所得に当たるか、給与所得に当たるかの判定が争われた事件で東京地裁(川神裕裁判長)は、譲渡制限解除に伴う経済的利益は退職、勤務関係の終了という事実によって給付された要件を満たしていないと指摘、納税者側の主張を棄却した。

 この事件は、勤務先の親会社から譲渡制限等付株式を付与された納税者が、勤務先を退職後、譲渡制限が解除された各年度末の株価等による経済的利益を退職所得として申告したのが発端。しかし原処分庁が給与所得に当たると認定し、譲渡制限が解除された日の株価等で株式価格を計算すべきであるとして更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたため、納税者側が確定申告に係る税額等を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定処分の取消しを求めて提訴したという事案である。

 つまり、譲渡制限付株式の譲渡制限の解除に伴う経済的利益が給与所得に該当するか退職所得に該当するかが争点になった事案だが、納税者側はキャリア・リタイアメントの要件を満たした結果、退職に伴って経済的利益を享受したものであるからその経済的利益は退職所得に該当すると主張して、原処分の取消しを求めたわけだ。

 これに対して判決は退職所得の要件を説明した上で、経済的利益は職務を遂行したことに対する対価としての性質を有する経済的利益であることは明らかであると指摘するとともに、雇用契約等に基づいて提供された非独立的な労務の対価として給付されたものであると認定。結局、退職所得の要件の一つである勤務関係の終了という事実によって初めて給付されるという要件そもそも満たさないと判断して、納税者側の主張を斥ける判決を言い渡している。

(2012.07.24東京地裁判決、平成23年(行ウ)第458号)