弁護士会の役員活動に伴う懇親会費等も必要経費と逆転判決
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:10/09/2012  提供元:21C・TFフォーラム



 弁護士会の役員等を務めた弁護士が、役員活動に伴って支出した懇親会費等が事業所得の計算上必要経費に当たる否かの判断が争われた事件で、東京高裁(春日通良裁判長)は弁護士として行う事業の遂行上必要な支出であれば、弁護士会等の役員等として行った活動に要した必要も、その事業所得の一般対応の必要経費に該当すると判断して一審の判断を否定、弁護士側の主張を一部認める逆転判決を言い渡した。

 この事件は、弁護士会等の役員等を務めた弁護士が、役員等としての活動に伴って支出した懇親会費等を事業所得の計算上必要経費に算入して申告したところ、原処分庁が必要経費算入を否認、更正処分等をしてきたためその取消しを求めて提訴したのが発端になったもの。しかし、一審の東京地裁は事業所得を生ずべき業務に直接関係して支出された費用であるとはいえないことから原処分は妥当と判断して弁護士側の主張を斥けたため、控訴して再度、その取消しを求めたという事案である。

 控訴審はまず、必要経費として控除されるためには、事業所得を生ずべき業務の遂行上必要であることを要すると解釈した上で、ある支出が業務の遂行上必要なものであれば、その業務と関連するものであると指摘。加えて、事業の業務と直接関係を持つことを求めると解釈する根拠は見当たらず、直接という文言の意味も必ずしも明らかではないとも指摘して、国側の主張を否定した。

 その結果、弁護士会等の役員等としての活動に伴って支出した懇親会等の費用であっても、弁護士としての事業所得を生ずべき業務の遂行上必要な支出であれば、その事業所得の一般対応の必要経費に該当すると判示して、国側の主張を斥ける判決を言い渡した。

 ただし、二次会等の過大になる部分の必要経費性は否定されたため、一部取消しという判決結果になったが、いわゆる士業の必要経費性の解釈をめぐって一つの指針を示すものとして意義の深い判決となった。国側は控訴審の判決内容を不服として上告したが、最高裁が上告を受理するかしないかその判断に注目が必要だ。

(2012.09.19 東京高裁判決、平成23年(行コ)第298号)