地理的条件等の類似性が確保された不動産賃料との比較は妥当と判断
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:01/31/2017  提供元:21C・TFフォーラム



 妻が代表取締役の同族会社に内科医師が支払った不動産賃借料が高額と認定され、同族会社の行為計算否認規定が行使されたことの可否が争われた事件で国税不服審判所は、地理的条件等の類似性が確保された不動産の平均賃料と内科医が同族会社に支払った不動産賃料を比較することには合理性があるとして原処分を妥当と判断、審査請求を棄却した。

 この事件は、内科医を営む審査請求人が、妻が代表取締役を務める同族会社から不動産を賃借し、その賃料を事業所得の金額の計算上必要経費に算入して申告したのが発端。この申告に対して原処分庁が、同族会社は不動産賃貸に係る高額な賃料を収受していることを容認すると、請求人の所得税の負担を不当に減少させる結果になると認定して同族会社等の行為又は計算の否認規定を行使、原処分庁側が算定した賃料に基づいて事業所得の金額を計算し直すなどして所得税の更正処分等をしてきた。

 そこで内科医である請求人が、原処分庁算定の賃料には誤りがあると指摘、その全部取消しを求めて審査請求したという事案である。つまり請求人側は、原処分庁が同族会社等の行為計算否認の規定を適用する際に算定した診療所(土地を含む。)の賃料の算定方法には合理性がなく、同族会社に支払った賃料を必要経費に算入したことは所得税の負担を不当に減少させる結果にはならないと反論して、原処分の全部取消しを求めたわけだ。

 裁決は、所得税の負担を不当に減少させる結果となるか否かは同族会社の具体的な行為又は計算が通常の経済人の行為等として経済的合理性を有しているか否かを基準に判断すべきであると指摘した。その上で、不動産の賃料は地理的条件、用途、規模、構造等の状況が類似すれば、特別な事情がない限り同程度になるから、賃料の支払いが経済的合理性を有しているか否かを判断する際に、地理的条件等の類似性が確保された不動産の平均賃料と比較することには合理性があるとも指摘。

 その結果、診療所の類似物件の抽出基準は地理的条件等の類似性が確保され、その基準に従って抽出した診療所の適正賃料よりも高額であるから、通常の経済人の行為として経済的合理性を有しておらず、所得税の負担を不当に減少させる結果になると判断した。ただ、原処分庁の賃料の認定額にも誤りを指摘、結果的に一部取消しという結果になった。

(2016.05.30国税不服審判所裁決)