私道供用宅地には該当しないと判断、相続人側の訴えを棄却
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:03/01/2016  提供元:21C・TFフォーラム



 相続した歩道状の空地が、財産評価基本通達24が定める私道供用宅地に該当するか否かの判断が争われた事件で東京地裁(小林宏司裁判長)は、各土地がいずれも公道に接して、接道義務を果たすために設けられたものではなく、私道としての建築基準法上の制限が課されるわけでもないと認定、納税者側の請求を棄却した。

 この事件は、相続税の申告の際に、相続で取得した土地の評価額を評基通24が定める私道供用宅地として申告したところ、原処分庁が貸家建付地として評価すべきであると判断して更正、過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたため、相続人側がその取消しを求めて提訴したという事案である。

 相続人側は、歩道状空地は各共同住宅の住人の歩道として利用されている他、近隣住民のみならず通学路としても利用され、客観的用途が私道であるものの、賃借人その他関係者以外の不特定多数の者の通行の用に供されている場合は私道としての負担を強いられるのであるから、私道供用宅地に該当するという主張を展開した。

 しかし判決は、事実認定の上、いずれの土地も公道に接して、歩道状空地は接道義務を果たすために設けられたものではなく、その利用の際には私道としての建築基準法上の利用制限が課されるわけではないと認定。

 また、被相続人が都市計画の開発行為の指導を受け、歩道状空地を設けることになったものであり、土地の利用形態を変更すれば制約を受けることもなくなり、通常の宅地と同様に利用できる潜在的可能性に相応する価値を有しているとも指摘。さらに、歩道としての供用が求められる制約にすぎず、歩道状空地も含め建物敷地の一部として建坪率等が算定されているのであるから、所定の容積率の建物を建築し得るための建物敷地としての役割も果たしているという認定をした。

 結局、評基通24が想定する私道に課せられた制約の程度と、歩道状空地に課されている制約の程度は大きく異なると指摘した上で、私道供用宅地に該当するとはいえないと判示して、棄却した。

(2015.07.16東京地裁判決、平成25年(行コ)第373号)