和解金の支払いは資本等取引に該当すると判断して損金算入を否定
カテゴリ:01.法人税 裁決・判例
作成日:05/15/2012  提供元:21C・TFフォーラム



 医療法人が、出資持分の払戻請求及び退職金に係る支払請求訴訟後の和解に伴い元社員に支払った和解金の損金算入の可否が争われた審査請求事件で国税不服審判所は、資本金勘定から減額した出資金相当額等を和解金から控除した金員は剰余金の分配に当たると認定して資本等取引に該当するため損金算入は認められないと判断、審査請求を棄却した。

 この事件は、医療業を営む請求人が元社員から出資持分の払戻請求及び退職金の支払請求訴訟を提起された後に和解が成立、和解金を支払ったのが発端。そこで、和解金を特別損失として申告したところ、原処分庁が資本等取引に該当するため損金算入を否認して法人税の更正処分等をしてきたため、医療法人がその取消しを求めた事案である。

 医療法人側は、訴訟上の和解は元社員らの出資持分の払戻請求及び退職金の支払請求を認めた内容の和解ではなく、多様な意味合いを包含した金額面での和解であり、和解金から退職金を控除した金員は経営上当然の経済行為に基づく支払金という性格を意味しているから、出資持分があることを根拠に支払ったものではないと主張。そのため、和解金から退職金を控除した金員から出資額等を控除した額は損金に計上できると主張した。

 裁決は、訴訟の経緯や和解金を支払うに至った経緯等を踏まえ、元社員らに出資持分の払戻請求権相当の権利を認めるなど、和解金によって債権債務関係を消滅させたものと推認。その上で、退職金相当額を差し引いた金員は出資者たる地位に基づいて支払われた金員であると指摘して、その金員から資本金勘定を減額した出資金相当額等を控除した金員は剰余金の分配に当たるとも認定。さらに、役員退職金相当額が和解金の計算に含められた経緯等から、退職金相当額は医療法人が真に支払いを受けた者に代わって仮払金・立替金の類として支払ったものであると考えるのが自然であるという判断も示した。結局、医療法人が特別損失額として処理した金員は法人税法22条3項の規定により、その事業年度の損金に算入することはできないと判断、棄却している。

(国税不服審判所、2011.08.02裁決)