事前通知なしに納税者に赴いても違法性はないと判断
カテゴリ:08.国税通則法 裁決・判例
作成日:04/19/2016  提供元:21C・TFフォーラム



 税務調査の臨場の前に事前通知をしなかったことが、原処分を取り消すべき事由に該当するか否かの判断が争われた事件で、国税不服審判所は、調査事項に関連性を有する物件の検査をした事実は認められず、質問検査権の行使を行ってはいないから臨場の前に事前通知をしなかったことが原処分を取り消すべき事由には該当しないと判断、棄却した。

 この事件は、原処分庁が審査請求人の所得税について推計の方法により事業所得の金額を算出して所得税の更正処分等を行い、また消費税及び地方消費税に関しては帳簿及び請求書等の保存がないことを理由に仕入税額控除を否認、消費税等の更正処分等を行ったことが発端になったもの。

 そこで請求人が、原処分庁の推計方法には合理性がなく、課税仕入れはあるのだから仕入税額控除を認めるべきであると主張して、原処分の全部取消しを求めて審査請求した事案である。つまり、請求人側は、原処分に係る調査の担当職員(調査担当者)が請求人の自宅兼事業所に臨場する前に請求人に対し、国税通則法74条の9(納税義務者に対する調査の事前通知等)が定める事前通知をしなかったことが、原処分を取り消すべき事由に該当する旨主張して、原処分の取消しを求めたわけだ。

 これに対して裁決は、調査担当者は事前連絡をしないで請求人の自宅兼事業所を訪れ、請求人であることを確認した上で、身分証明書と質問検査章を提示し、所属と氏名を述べ、税務調査のために来訪した旨を伝えているが、請求人の課税標準等又は税額等を認定する目的で請求人に質問し、又はその事業に関する帳簿、書類その他その調査事項に関連性を有する物件の検査をした事実は認められず、質問検査権を行使してはいないと認定。

 つまり、調査担当者は請求人の事業に関する質問や帳簿書類その他の物件の検査等に至っていないのであるから、質問検査権の行使に当たらないことは明らかであると認定した上で、臨場前に事前通知をしなかったことが、原処分を取り消すべき事由には該当しないと判断して、請求人の主張を斥けたわけだ。

(国税不服審判所2015.07.21裁決)