上場株式等の譲渡損失の繰越控除は申告書の連続した提出が必要
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:01/17/2017  提供元:21C・TFフォーラム



上場株式等に係る譲渡損失が生じたことに伴い繰越控除の特例を適用する際に求められる適用要件が問われた事件で国税不服審判所は、譲渡損失の発生年分以降、確定申告書を時系列的に連続して提出されていることが求められると判断、審査請求を棄却した。

 この事件は、審査請求人が、所得税に係る更正の請求及び確定申告の際に、株式等に係る譲渡所得等の金額の計算上、上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除の特例を適用してしたところ、原処分庁が、前々年分等の所得税の各確定申告書の提出が前年分の確定申告書の提出後であるため、同特例の適用要件である「その後において連続して確定申告書を提出している場合」に該当しないことなどを理由に適用を否認、更正をすべき理由がない旨の通知処分及び更正処分をしてきたため、請求人が通知処分の全部取消し及び更正処分の一部取消しを求めて審査請求したという事案である。

 請求人側は、上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例(措法37の12の2)を適用する際の手続要件として定められている「連続して確定申告書を提出している場合」とは、更正の請求等により、結果として上場株式等に係る譲渡損失の金額に関して譲渡所得等の金額の計算の連続性が確認できればいいのであるから、上場株式等に係る譲渡損失の金額が生じた年分の確定申告書が、特例の適用を受ける年分の確定申告書の後に提出されても、特例を適用することができる旨主張して、原処分の取消しを求めた。

 しかし裁決は、同特例は「上場株式等に係る譲渡損失の金額が生じた年分の所得税につき……確定申告書を提出し、かつ、その後において連続して確定申告書を提出している場合であって」と規定し、上場株式等に係る譲渡損失の金額が生じた年分の確定申告書の提出と同特例の適用を受ける年分の確定申告書の提出との先後関係については、「その後において」と規定していることから、上場株式等に係る譲渡損失の金額が生じた年分の確定申告書の提出が先であることは、文理上明らかであると指摘して、請求を斥けている。

(2016.03.07国税不服審判所裁決)