増資による新株式の取得によって受けた利益が生じていると裁決
カテゴリ:16.その他 裁決・判例
作成日:09/13/2016  提供元:21C・TFフォーラム



 第二次納税義務の納付告知処分に基づく納付すべき限度額が、「受けた利益」の額の範囲内であるか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、受けた利益が取引相場のない株式の場合、ディスカウント・キャッシュ・フロー法と時価純資産法を併用してその株式を評価したことに不合理な点は認められないと判断、審査請求人側の主張を斥けた。

 この事件は、滞納法人が子会社の株主総会において募集株式発行の議案について議決権を行使したことによって、請求人がその子会社の株式の第三者割当てを受けたことを巡り、国税徴収法39条(無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務)が定める「その他第三者に利益を与える処分」に該当すると原処分庁が判断、第二次納税義務の納付告知処分をしてきたことから、請求人側が第三者割当てによって利益は生じていないなどと主張して、原処分の全部取消しを求めて審査請求したという事案である。

 つまり、受けた利益が取引相場のない株式である場合において、第二次納税義務の限度額を算定する際に、原処分庁が採用したディスカウント・キャッシュ・フロー法(いわゆるDCF法)と時価純資産法の併用方式が妥当か否かの判断が争われたという事案だ。

 これに対して裁決は、国税徴収法39条が定める第二次納税義務の限度額について、「受けた利益」が金銭以外のものであるときの財産の評価方法として、同法上、相続税の評価方法を適用又は準用する旨の規定はなく、取引相場のない株式の評価に当たって、DCF法と時価純資産法の併用を採用した原処分庁の評価方法に不合理な点は認められないと指摘。

 その上で、滞納法人の子会社の増資に伴う新株式を取得したことに伴い、請求人側には「受けた利益」が生じていると認定して、請求人側の主張を斥けた。ただ、原処分のうち、納付すべき限度額のうち審判所認定額を超える部分は取り消されるべきであると判断され、結果的に一部取消しという裁決結果になった。

(2015.10.28国税不服審判所裁決)