いわゆるリストリクテッド・シェアに係る所得は給与所得と裁決
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:03/19/2012  提供元:21C・TFフォーラム



 勤務先の親会社から付与されたリストリクテッド・シェアは退職所得か否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、継続的な勤務に対する労務の対価の一部の後払いの性質を有していないことから給与所得に該当すると判断、審査請求を棄却した。

 この事件は、審査請求人が勤務先の親会社から付与されたリストリクテッド・シェア(いわゆる譲渡等制限付株式)に係る所得を退職所得として申告したところ、原処分庁が給与所得と認定して申告内容を否認してきたため、その取消しを求めて審査請求したもの。

 このリストリクテッド・シェアは、付与日に議決権及び配当受領権を取得するものの株券の受渡しはなく、売却・名義書換・譲渡・担保差入れができないなど譲渡制限が付された株式。一定期間の勤務後退職し、勤務先グループの業務と競合する業務等を行わない旨の条件を満たせば譲渡等制限は解除されるが、条件に反した場合は没収されるという制約もある。

 そこで請求人は、1)特別な退職に際してのみ支給され、退職しなければ本来支払われない、2)勤務年数及び年齢が支給基準とされ、永年の勤務に対する報奨としての意図が明白である、3)退職後は同業他社で働かないという条件を課して実質的な引退を強いており、現実に退職したことにより支給されたのであるから、生活保障的な最後の所得でもあること等を理由に挙げて、退職所得に該当する旨主張した。

 しかし裁決は、在職期間中に付与され、仮に退職しなかったとしても条件を満たせば、没収されることなくその株式に係る所得を得ることができるのであるから、退職を理由にした給付とは認められないと認定。また、前年の業績に応じて賞与の一部として親会社から付与されたものであり、継続的な勤務に対する報償やその間の労務対価の一部の後払いの性質を有するものとみることもできないから退職所得には該当せず給与所得に該当すると判断して、審査請求を棄却している。

(国税不服審判所、2011.02.01裁決)