期限内申告書の未定出も重加算税の要件を満たすと判断
カテゴリ:08.国税通則法 裁決・判例
作成日:08/02/2016  提供元:21C・TFフォーラム



 法定申告期限後の申告書の提出が、隠ぺい仮装いわゆる重加算税の賦課要件を満たすか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、法定申告期限経過前の行為又は調査に対する虚偽答弁、虚偽証拠の提出を総合判断した上で隠ぺい仮装があったと認定して重加算税の賦課要件を充足すると判断、審査請求を棄却した。

 この事件は、国内の企業で研修及び技能実習を行わせる事業に係る業務ないし労務を提供していた請求人の所得税及び消費税等を巡り、税務調査後、法定申告期限後に所得税の申告書を提出したものの、消費税等の申告書が未提出だったことが発端になったもの。

 そこで原処分庁が、その後の調査の結果、所得区分や収入金額に係る事実を隠ぺい又は仮装したところに基づいて申告書を提出し又は提出していなかったと認定、所得税の更正処分並びに消費税等の決定処分を行うとともに、重加算税等の賦課決定処分をしてきたため、これを不服とした請求人がその全部取消しを求めて審査事案した事案である。

 請求人はまず、申告期限までの所得税の申告書の未提出は税知識の不足による失念と主張。その上で、外国人研修・技能実習制度の送出し機関である法人の従業員であり、前回の調査後、送出し機関から証明書の交付を受けた上で給与所得等に係る所得税の期限後申告書を提出しており、重加算税の賦課要件を満たさない旨主張を展開して、全部取消しを求めた。

 裁決は、重加算税の賦課要件の解釈を示した上で、請求人が1)事業から生ずる収入を、送出し機関の肩書きが付された口座に入金させた上で毎月ほぼ全額を現金で出金し、金員の流れを容易に把握できないようにすることで同機関に帰属するものであると装い、2)多額の事業収入を得ていながら5年間にわたり無申告を続け、3)調査後に、送出し機関に内容虚偽の証明書を作成・提出させるなどの工作を行い、事業主体は同機関にあり、請求人自身は給与を得ていたと装うなどしていた事実を指摘。その上で、当初から課税標準や税額等を申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたと認定、その意図に基づき期限内申告書を提出しなかったのは重加算税の賦課要件を満たすと判断して、棄却した。

(2015.10.30国税不服審判所判決)