債務の履行が客観的に明らかでないと指摘、特例の適用を否定
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:03/06/2012  提供元:21C・TFフォーラム



 根抵当権が設定された土地の譲渡に対して保証債務の履行に伴う譲渡特例の適用が認められるか否かが争われた事件で国税不服審判所は、譲渡の経緯、譲渡代金の流れ、金融機関の処理状況等から保証債務の履行が客観的に明らかとは認められないと指摘、審査請求を棄却した。

 この事件は、同族会社の代表取締役(審査請求人)が行った土地の譲渡は、同族会社の債務の連帯保証をしていた代表取締役が根抵当権を設定した土地を保証債務の履行のために譲渡した後、求償権の行使ができなくなったのであるから資産の譲渡代金が回収不能となった場合の所得計算の特例(所法64(2))が適用されるとして更正の請求をしたのが発端。

 しかし原処分庁が、土地の譲渡代金は同族会社に貸し付けたもので保証債務の履行には当たらないと同特例の適用を否認、納付税額を一部減額する更正処分を行うに止めたため、その全部取消しを求めた事案である。つまり請求人側は、物上保証していた土地の譲渡代金をいったん主債務者の口座に入金したものの、その後、直ちにその口座から金融機関に同額を返済しており、その返済は実質的に請求人が保証債務を履行したものである旨を主張していた。

 これに対して裁決はまず、主債務者の口座に入金された資金は請求人からの借入金と経理処理した上で、主債務者から金融機関へ返済している事実を重視。形式的には請求人による保証債務の履行ではないと認定、実質的な保証債務の履行であるためにはその履行が客観的に明らかであることが必要であると解釈した。しかし、譲渡の経緯、譲渡代金の流れ、金融機関の処理状況等から請求人による保証債務の履行状況が客観的に明らかとは認められず、主債務者の資力、債務の返済状況等からみても返済時点において保証債務を履行する必要性が客観的に明らかであったとも認めることができないと指摘して、審査請求を棄却している。

(国税不服審判所、2011.02.02裁決)