香港投資協定はタックスヘイブン税制を排除しないと判断
カテゴリ:01.法人税 裁決・判例
作成日:03/26/2012  提供元:21C・TFフォーラム



 香港に本店を有する海外子会社が特定外国子会社等に該当し、いわゆるタックスヘイブン対策税制の適用を受けるか否かの判断が争われた事件で東京高裁(前田順司裁判長)は、香港の子会社が自ら販売製品の製造を行っていたなどの事情を考慮、一審と同様に特定外国子会社等と認定して行われた課税処分を適法と判断、法人側の控訴を棄却した。

 この事件は、香港に本店を有する子会社が特定外国子会社等に該当し、主たる事業である製造業を中国で行っているため適用除外事由にも該当しないことから、タックスヘイブン対策税制が適用されるとして更正処分された光学レンズ・光学機器の製造販売等を目的とする法人が提訴したもの。しかし、一審で棄却されたことから控訴して更にその取消しを求めていた事案である。

 控訴審で法人側は、製造行為の主体を香港の子会社と認定し、主たる事業が製造業であると認定した原審の判断には法律的実質主義、私法関係準拠主義違反、経験則違反、目的論的解釈による適用除外、さらに香港投資協定違反等があり、更正処分等は香港投資協定に違反するため違法と主張して原判決の取消しを求めていた。

 これに対して控訴審はまず、法人側の控訴審における上記の主張を悉く斥けるとともに、タックスヘイブン対策税制は我が国の内国法人に対する課税権の行使として行われるものであると解釈。その上で、法人側が強く主張していた香港投資協定にはタックスヘイブン対策税制の適用を排除する旨の明文規定が存在しないと指摘するとともに、少なくともそのことについて十分な解釈上の根拠が存するということもできないと判断して、法人側の控訴を棄却する判決を言い渡している。

(2011.08.30 東京高裁判決、平成21年(行コ)第236号)