ストック・ユニットの収入すべき日は普通株式への転換日と判示
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:09/06/2016  提供元:21C・TFフォーラム



 米国法人の関連会社に勤務する者が、所定の転換日に普通株式に転換される権利等を付与された場合における給与等の収入すべき日の判断が争われた事件で東京地裁(小林宏司裁判長)は、譲渡制限により経済的価値の流入を否定すべき特段の事情がないことから、転換日が権利確定日に当たると判示して、請求を斥ける判決を言い渡した。

 この事件は、米国法人の関連会社に勤務する者が株式報酬制度に基づき、所定の転換日に米国法人の普通株式に転換される「ストック・ユニット」を付与された後、転換日の到来に伴い株式を取得したため、所得税の確定申告の際、株式の譲渡制限が解除された日における高値と安値の単純平均値に基づく金額を給与等の収入金額として申告したのが発端。

 これに対して原処分庁が減額更正の上、株式報酬に係る給与等の収入金額は、株式を取得できる権利の確定日における終値に基づいて算定すべきであるとして、増額再更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたため、納税者側が減額更正処分に係る総所得金額及び納付すべき税額を超える部分さらに賦課決定処分の取消しを求めて提訴したという事案である。

 株式報酬に係る給与等の収入すべき日が、普通株式への転換日か譲渡制限解除日かが争点の一つになった事案であるが、納税者側は、権利確定主義を踏まえ、普通株式の引渡時期、譲渡制限があること等を理由に、譲渡制限解除日が給与等の収入すべき日であるという主張を展開した。

 そこで判決はまず、株式報酬制度つまりストック・ユニットの事実関係を整理した上で、所得税法上の権利確定主義の解釈に触れ、株式報酬に係る給与等の収入すべき日の検討を行っている。その結果、米国法人に普通株式の支払いを求めることができるストック・ユニットは、転換日が到来した日以降は権利が取り消されることがなくなり、その権利に基づく普通株式の支払日が転換日とされ、同日以降、権利を求め得ることになったのであると認定した上で、株式報酬については転換日に収入の原因となる権利が確定したというべきであると指摘。結局、株式報酬に係る給与等の収入すべき日が転換日になると判示、棄却した。

(2015.10.08東京地裁判決、平成25年(行ウ)第353号)