事業主借が原資の青色専従者給与も相当額なら必要経費に算入
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:03/08/2016  提供元:21C・TFフォーラム



 青色事業専従者給与の原資が事業主借であることを理由に、事業所得の金額の計算上、支払額全額の必要経費算入が否認された事件で国税不服審判所は、事業主借勘定に振り替えられた事業用の現金から支払われており、労務の対価として相当と認められる金額は必要経費に算入することが相当と判断して、原処分庁側の主張を斥けた。

 この事件は、医師として複数の病院に勤務する一方、自ら診療所を営む審査請求人に対して、事業所得の金額の計算上、必要経費に算入した旅費交通等の一部及び妻に支払った青色事業専従者給与を原処分庁が否認、更正処分等をしたことが発端になったもの。

 そこで請求人が、その全部取消しを求めて審査請求したという事案である。つまり原処分庁側は、請求人には事業収入の約4倍の給与収入があり、その給与収入が事業に資金流入され、青色事業専従者給与が支払われていることを踏まえれば、事業から支払いを受けた場合には当たらないことを理由に、その全額が必要経費には算入できないと主張したわけだ。

 これに対して裁決はまず、事業に専従する親族がある場合の必要経費の特例等を定めた所得税法57条に触れ、事業収入以外から事業に流入した資金により支払われた青色事業専従者給与を必要経費に算入することを認めない旨を規定したものと解するのは相当ではないという判断を示した上で、給与収入は事業主借勘定に振り替えられ、事業用とされた現金から支払われており、事業から支払われたものであると認定した。

 その結果、労務の対価として相当と認められる金額は、青色事業専従者給与として、事業所得の金額の計算上、必要経費に算入することが相当であると判断、原処分の主張を斥けている。

(国税不服審判所平成27年4月13日裁決)