合併交付金が利益の配当か否かは総合的な判断が必要と示唆
カテゴリ:01.法人税 裁決・判例
作成日:04/12/2005  提供元:21C・TFフォーラム



 吸収合併が適格合併に当たるか否かの判断からみなし配当の有無が争われた事案で、国税不服審判所は被合併法人の株主に対して合併会社の株式以外の資産を交付しておらず適格合併に当たるから、みなし配当の額も発生しないと判断、原処分を取り消した。

 この事案は、審査請求人が行った合併に対して、原処分庁が適格合併に該当しないと判断してみなし配当を認定、源泉所得税の納税告知処分をした上で不納付加算税の賦課決定処分をしたためその取消しを求めていたもの。

 被合併法人の株主が取得した株式、金銭その他の資産の合計額の一部を、所得税の課税上、利益の配当とみなす場合から除外される適格合併に該当するか否かが争点になった事案だが、原処分庁は合併交付金が配当に代わる金銭の場合は、その旨を合併契約書等に明示しておく必要があると主張していた。

 しかし裁決は、合併契約書等に合併交付金が利益の配当であるか否かの記載がない場合は、合併交付金の支払いの経緯、支払いを受けた株主の認識等を総合的に検討し、実質的に利益の配当相当額があるかどうかを判断するのが相当と解釈。その解釈に立って事実関係を調査すると、合併交付金は合併比率調整のための交付金とは認められず、最終期の利益の配当を行う実情と動機があったと認められ、被合併法人の株主の全員が合併交付金を配当として申告している。また、審査請求人は合併交付金の支払時に利益の配当として源泉徴収しており、株主には配当金である旨を通知していることが認められると認定した。

 その結果、合併交付金の実質は被合併法人の株主に対する最終期の利益の配当として交付された金銭と認めるのが相当で適格合併(そうであればみなし配当も発生しない。)に当たると判断、原処分を全部取り消した。

(国税不服審判所、2003.12.05裁決)