職務発明対価が権利移転時に確定していなかったと指摘、棄却
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:11/20/2012  提供元:21C・TFフォーラム



 職務発明に係る相当の対価を求めた訴訟で受領した和解金が、雑所得に該当するか譲渡所得に該当するかの所得区分の判定が争われた事件で、大阪高裁(岩田好二裁判長)は原審を支持、権利移転時に確定していなかったことを理由に、職務発明に係る相当の対価として受領した和解金であっても譲渡所得には該当しないと判示、控訴を棄却した。

 この事件は、勤務していた会社に対する特許法に基づく職務発明に係る相当の対価の支払いを求める訴えで和解が成立、3000万円の和解金を受領したのが発端。その和解金を雑所得として当初申告した後、譲渡所得に当たると考え直し、更正の請求をしたところ、原処分庁が雑所得に該当し譲渡所得には当たらないと判断、更正すべき理由がない旨の通知処分をしてきたため、その取消しを求めて提訴した。

 しかし一審(大阪地裁)が、和解金は雑所得に該当すると判断して棄却(平成23年10月14日判決、平成21年(行ウ)第155号)したため、納税者が控訴したという事案である。

 控訴審で納税者は、「資産の所有権その他の権利が相手方に移転する機会に一時に実現した所得であること」が譲渡所得の要件とした原審の判断を取り上げ、法令上そのような定めはないと指摘。そうした解釈は通達を無批判に前提とするものであり、法令の解釈としても相当ではないと批判して、原処分の取消しを求めた。

 これに対して控訴審は、譲渡所得は「譲渡に基因して譲渡の機会に生じた所得」であり、そうした解釈は租税法律主義に反しないと解釈。また、相当の対価が、特許を受ける権利の承継時の客観的交換価値によって定まった承継の対価であるという納税者側の主張には理由がないとも指摘した。結局、資産の所有権その他の権利が相手方に移転する時にその内容が確定して生じた所得が「譲渡に基因して譲渡の機会に生じた所得」である譲渡所得に該当すると判示して、控訴を棄却している。

(2012.04.26大阪高裁判決、平成23年(行コ)第152号)。