押印が漏れている申告書でも効力に影響はないと判断
カテゴリ:08.国税通則法 裁決・判例
作成日:12/22/2015  提供元:21C・TFフォーラム



 押印が漏れている申告書であっても申告書としての効力が認められるか否かが争われた事件で国税不服審判所は、申告書としての他の要件を具備している限り、押印がないことのみをもってその効力がないとはいえないと判断、原処分を全部取り消した。

 この事件は、審査請求人が法定申告期限後に相続税の申告書を提出したものとして、原処分庁が無申告加算税の賦課決定処分をしてきたことから、請求人が共同相続人は申告期限内に共同で申告書を提出し、請求人の押印を欠いていたものの、請求人の申告の意思に基づいて提出された有効な申告書であると主張して、原処分の全部取消しを求めて審査請求したもの。

 原処分庁側は、申告期限内に提出した相続税の申告書に請求人の押印がなく国税通則法124条を充足していない、申告書の書面等から請求人の申告の意思を認められないことから同法17条が定める期限内申告書にも該当しない旨主張して棄却を求めた。

 これに対して裁決は、押印がない場合でも、単なる押印漏れであることも考えられるので、申告書として他の要件を具備している限り、押印がないことのみをもって効力がないとはいえず、このような場合は、申告書が押印のない者の申告の意思に基づいて提出されたものと認められるか否かによって判断すべきであり、その判断に当たっては、申告書の作成経緯や原処分庁への申告書の提出状況及び納税状況等を総合考慮すべきと指摘。

 その上で、
1)申告書は遺産分割協議で成立した内容を基に共同相続人の総意により作成され、
2)請求人は共同相続人の長女に申告書の提出を任せ、長女が現に提出したものであり、
3)請求人が申告納税義務を認識し相続税を納期限内に全額納付したことが認められるため、
請求人の意思に基づいて提出されたものと認定した。

 さらに、押印箇所を除き申告書の要件を具備しているとも認定。その結果、申告書に請求人の押印がなかったのは単なる押印漏れにすぎず、申告書としての効力には影響しないというべきであるから、国税通則法17条が定める期限内申告書に該当すると判断、原処分を全部取り消した。

(国税不服審判所2015.04.01裁決)