馴れ合い訴訟による和解ではないと判断、原処分を全部取消し
カテゴリ:08.国税通則法 裁決・判例
作成日:01/20/2015  提供元:21C・TFフォーラム



 被相続人の遺産を構成しないことを確認する旨の裁判上の和解が、判決と同一の効力を有する和解に該当するか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、和解の内容が実質的に見ても客観的、合理的根拠を欠くといえないことから、更正の請求が認められる判決に準じた和解に該当すると判断、原処分を全部取り消す裁決を言い渡した。

 この事件は、相続税の修正申告の際に遺産に含めた土地について、後日、相続人との間でその土地が被相続人の遺産を構成しない旨を確認する旨の裁判で和解が成立したことから、判決と同一の効力を有する和解に該当すると判断、更正の請求をしたのが発端。これに対して原処分庁が、更正をすべき理由がない旨の通知処分をしてきたため、請求人側がその全部取消しを求めて審査請求したという事案である。

 つまり原処分庁は、被相続人の遺産を構成しない旨の確認を求めた裁判上の和解は、当事者が租税回避等を目的に馴れ合いと評価される和解をしたにすぎないという判断に基づいて否認してきたわけだ。

 裁決は、1)各土地の一部に請求人の兄名義の居宅が存在すること、2)相続開始の数年前にA法人を権利者とする所有権移転登記がされていること、3)売買代金に相当する金員が貸付金名目でA法人等から被相続人に交付されている事実を認定。そうした事実認定の結果、各土地が被相続人の遺産を構成しない旨を確認した和解の内容は、証拠等から窺われる客観的事実関係に反していると認めるには足らないと指摘した。

 つまり、相続開始時に所有権の帰属に関して当事者間に争いのあった各土地について、相続が開始する数年前に被相続人からA法人に譲渡されていたことが認められ、実質的にみても客観的、合理的根拠を欠くということはできないと判断して、原処分を全部取り消している。

(2014.05.13国税不服審判所裁決)