真価問われる地方政策税制の今後
カテゴリ:06.地方税 トピック
作成日:10/31/2016  提供元:21C・TFフォーラム



 東京都税制調査会(会長/池上岳彦立大教授)は10月27日、来年度の税制改正に向けて都独自の案をまとめた。12月の税調答申に先駆けて公表することで、アピールするねらいがある。石原慎太郎元都知事の肝いりで2000年に設置された同税調は、地方分権を背景に「銀行税」や「宿泊税」の母体となり、かつては国に揺さぶりをかけることにも成功した。

 こうした自治体税調は横浜市も取り組んでいるが、いまや存在感は薄くなる一方だ。今回の都税調案もしきりと地方の税財源拡充等を訴えているが、独創性とダイナミズムに欠けているのが現実だ。だが、自治体の独自税制への取組みは、地味とはいえこれまで地方が国を変えるきっかけとなってきた。

 三重県が創設した産業廃棄物税はいま27道府県1市が条例化してほぼ全国的な税制となり、問題となっていた産廃の不法投棄に歯止めをかけることができた。水源涵養のための森林環境税も住民税の超過課税というかたちで薄く広く課税して36府県に広がり、国の環境税構想をリードした。千葉市等が実施に踏み切った結婚歴のないシングルマザーに対する住民税の寡婦(寡夫)控除のみなし適用は、全国に13万人いるとされる対象者に福音となった。神奈川県の臨時特例企業税や横浜市の勝馬投票券発売税構想は訴訟や係争処理に発展して企業や国と争ったが、地方税のあり方を考え直すきっかけともなった。

 これらの動きが始まってまだ十数年。地方の政策税制の真価が問われるのはこれからだろう。