調査官の登記所通い増加、収集資料活かすルールとは
カテゴリ:04.資産税 トピック
作成日:12/20/2012  提供元:21C・TFフォーラム



 税収不足により国の台所事情が悪化する中、税務調査官の「登記所通い」が盛んだ。一度把握すればその後の確認が容易な土地や建物など不動産の移動は、税務署にとって一番押えておきたい情報の一つ。登記所通いで収集された資料情報は、一定のルールに沿って分類整理された上で“有効活用”される。気になるのはこの「一定のルール」の中身だ。

 不動産登記が移転した場合には、その不動産の譲渡人用と譲受人用の2枚の「所有権移転登記資料」が提出される。国税当局の内部資料によると、このうち譲渡人用については譲渡所得の課税資料として資産課税部門へ、譲受人用については資金源泉を検討する端緒資料として所得税担当部門へ回される。

 資産課税部門ではこれを年別、所在地別に区分し、「見込時価額」を記入。そして自署で活用すべきものと他の税務署で活用すべきものに区分し、自署活用分については「不動産の譲受けの対価の支払調書」等とともに譲渡者ごとに名寄せして、見込時価額または譲渡価額の合計額が一定額以上と認められるものは「要処理事案」としてさまざまな角度から検討が加えられていく。

 要処理事案とされたものは、まず「納税相談事績書」を作成する。最初の添付資料が登記資料せんだ。そして、必要に応じて来署依頼状や申告案内状をそれぞれ確定申告書とともに送付。納税者と個別面接をしたら、譲渡収入金額や取得日、譲渡費用など譲渡所得の計算に関する基本事項のほか、特例適用要件について事実関係をできるだけ具体的に聴取し、この納税相談事績書に記入していく。

 そして、この納税相談事績書や計算明細書などの関係書類をもとに申告額の検討を行い、取引内容が複雑で多額の不正が見込まれる場合や、特例適用に疑問がある事案などは「実地調査」。譲渡所得計算誤りなど比較的簡易なミスで、机上処理ができるものは「事後処理」。実地調査や事後処理が必要ないと認められたものは「省略」へと分類されていく。

 ちなみに、納税者から申告のあった譲渡物件で、資料せんに見込時価額の記載がない事案や、見込時価額の見直しが必要と認められる事案については、その譲渡物件が自署管内であれば適宜算定や見直しを行い、管轄外であれば所轄税務署に照会。つまり、譲渡物件がどこにあろうとも、ほぼ確実に税務署に把握されていると思って間違いないということだ。