役員退職給与に不相当に高額な部分はないと判示、一部認容
カテゴリ:01.法人税 裁決・判例
作成日:06/14/2016  提供元:21C・TFフォーラム



 役員給与及び役員退職給与に「不相当に高額な部分の金額」があったか否かの判断が争われた事件で東京地裁(舘内比佐志裁判長)は、給与については類似法人の最高額を超える部分は不相当に高額であると判断したが、退職給与については法人の経営や成長等に相応の貢献があったと認定、比較法人の平均額を超える部分が不相当に高額とは言えないと判示した。

 この事件は、泡盛の製造及び販売等を目的にする法人が役員4名に支給した役員給与及び役員退職給与に不相当に高額な部分があると原処分庁が認定、更正処分の上、過少申告加算税の賦課決定処分をしたことが発端。そこで法人側が、役員給与及び役員退職給与はいずれも適正額と主張、原処分の取消しを求めて提訴した事案である。

 原処分庁側は、役員の職務の内容、法人の収益及び使用人に対する給与の支払状況、類似法人の役員報酬等の支給状況に照らし、類似法人の中から更に比較法人を抽出した上、複数の比較法人の役員給与の最高額を抽出し、これらを平均した額を超える部分は、不相当に高額であると主張して、棄却するよう求めた。

 これに対して判決は、役員らの職務の内容が酒類の製造・販売を行う一般的な法人の役員に想定される職務内容を超えているとは認められないと指摘した上で、法人の収益及び使用人に対する給与の支給状況は売上総利益、営業利益さらに計上利益のいずれもが減少し、使用人に対する給与の状況に変化がないにもかかわらず役員給与総額のみが上昇していると認定。その結果、類似法人の役員給与の最高額を超える部分は不相当に高額であると判示した。

 一方、役員退職金については、比較法人の平均額が比較法人間に通常存在する諸要素の差異や個々の特殊性が捨象され、平準化された数値であると評価することは困難であると指摘。その上で、職務の内容が法人の経営や成長等に対し、代表取締役として相応のものであるとはいえない特段の事情のない限り、比較法人の代表取締役に対する給与の最高額の平均額を超える部分をもって不相当に高額な部分であるとすることはできないと判示して、法人側の主張を認容する判決を言い渡している。

(2016.04.22東京地裁判決、平成25年(行ウ)第5号)