マルサ規定が一般に飛び火、「故意の無申告犯」の創設
カテゴリ:16.その他 トピック
作成日:02/27/2014  提供元:21C・TFフォーラム



 国税局査察部、通称「マルサ」の肝煎りで創設された“マルサ規定”が一般納税者に影響を及ぼしている。ここでいうマルサ規定とは、「故意の申告書不提出によるほ脱犯(故意の無申告犯)」のこと。仮装隠ぺいを伴わない無申告でも「脱税の意図」がある場合は脱税犯の一種として取り締まるという規定だ。罰則は5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金。

 近年、インターネット取引の普及により、外為証拠金取引(FX取引)等で巨額の所得を得ながら税逃れのために故意に申告を行わず、結果として多額の税を免れるケースが指摘されている。例えばFX取引で10億円儲けた人が申告しなかったとしても、これまでは「脱税犯」として処罰されることはなかったが、課税の公平の観点からこれではあまりに不合理ということで、国税庁査察課が5年越しで要望し続けた“対応策”が「故意の無申告犯」の創設だ。

 平成23年度税制改正で登場したこの新しい罰則により、税逃れに関する犯罪類型は、「脱税」、「故意の無申告」、「単純無申告」の3種類になった。このことで一般納税者にも大きな影響が出ているという。

 実は「単純無申告犯」の罰則はかなり昔からあるのだが、実際に適用されることは稀だった。仮装・隠ぺいなどの不正行為がないため、悪質性が低く、刑事事件には馴染まないためだ。国税当局や検察もこれまでは刑事事件として取り扱わず、国税当局内部で処理されるケースがほとんどだったが、故意の無申告犯が創設されたことで、「故意じゃないから単純無申告扱い」と整理がしやすくなり、単純無申告犯が成立しやすくなったのだという。

 また、単純無申告犯のハードルが下がったことで、「これまで加算税だけで済んでいたものが査察事案に移行するケースも増えるのではないか」(国税OB税理士)という見方もある。良識のある一般企業に査察規定は無縁だが、「故意の無申告」の登場で、課税上の罰則の環境は大きく変わっているということは念のため頭に入れておく必要がある。