滞納残高減少に原告訴訟や滞納処分免脱税あり
カテゴリ:12.国税庁関係 トピック
作成日:08/18/2016  提供元:21C・TFフォーラム



 先に国税庁が公表した平成27年度租税滞納状況では、滞納残高が9774億円と29年振りに1兆円を切ったことが明らかになったが、この大きな要因として挙げられるのがここ数年来、力を入れている原告訴訟の提起や滞納処分免脱税による告発といった法的措置による滞納整理だ。

 原告訴訟は、主に通常の滞納整理の手法では処理進展が図れない事案に対して行われるもので、27年度は156件と前年度の171件より減ってはいるものの高水準。提訴態様をみると、債権届出等訴訟等131件、差押債権取立訴訟15件、供託金取立等訴訟9件、名義変更詐害行為1件。この156件に前年度からの継続案件を含めた訴訟のうち同年度に148件が終結し、3件(差押債権取立訴訟2件、供託金取立等訴訟1件)を除いて国側が勝訴して滞納が整理された。

 一方、滞納処分免脱罪(国税徴収法第187条)は、国税の徴収を免れる目的で意図的に財産を隠ぺい等する悪質事案の告発時に適用される。27年度は、7件(法人5社・個人8人)告発し、裁判で2人に懲役1年(執行猶予3年)の刑が言い渡されている。

 運送業を営む法人のケースでは、1億円を超える国税を滞納していたにも関わらず納付意思を示さなかったことから、取引先に対して有する運送代金債権等を差し押さえたが、その後、この法人の代表者から事業を廃業した旨の申出があった。

 しかし、当局は、調査によって運輸支局に事業廃止届出書の提出の確認が出来なかったため、改めて財産調査を行ったところ、代表者が親族を代表者とする実体のないダミー会社を新設し、実質的に滞納法人の運送事業を継続していることのほか、取引先に対して社名を変更したなどの説明をした上で、運送代金約2億9千万円を計105回にわたりダミー会社名義の口座に振り込ませている事実を把握した。

 当局では、振込先を変更させた行為が、滞納処分の執行を免れる目的でされた財産の隠ぺいに該当すると判断し、滞納法人及び代表者を滞納処分免脱罪で告発、起訴されている。