法人化に伴う負債の引受額は消費税の課税対象と裁決
カテゴリ:03.消費税 裁決・判例
作成日:07/28/2009  提供元:21C・TFフォーラム



 法人成りした場合の事業用資産の引継ぎが消費税法上の対価を得て行われる課税資産の譲渡にあたるか否かの判断、つまり消費税の課税対象になるか否かの判断が争われた事案で、国税不服審判所は、事業用資産の引継ぎは現物出資ではなく債務の引受けを対価とした課税資産の譲渡にあたると判定、審査請求を棄却した。

 この事案は、個人で養殖業を営んでいた審査請求人が法人化する際に、金銭出資によって法人を設立した後、個人事業に係る資産とその資産と同額の負債を法人に引き継がせたことが発端になったもの。この行為に対して原処分庁が、資産の引継ぎは金銭以外の資産の出資には該当せず、法人が譲り受けた負債を反対給付に対価を得て行われた資産の譲渡にあたると認定した上で、消費税等の更正処分をしてきたわけだ。

 そこで請求人が、法人成りの実態は現物出資と同様であり金銭以外の資産の出資に該当するところ、その出資によって譲渡時の対価となるべき取得する株式もないのであるから、対価の額は零円であり消費税は発生しないことになると主張して、原処分の取消しを求めていた。

 これに対して裁決は、消費税の課税対象となるものを解釈した上で、消費税法上、非課税取引を含む資産及び負債が一体になった営業それ自体を一つの課税客体として捉えて課税対象とする規定は存在しないとも指摘した。その解釈にそって、請求人が資産の譲渡の対価として法人から金銭を収受する代わりに負債を引き受けさせ、債務の支払義務の消滅を図るという経済的利益を得ているのであるから、その負債の引受額は消費税法上の資産の譲渡の対価の額に相当すると判断、審査請求を棄却している。

(国税不服審判所、2008.12.15裁決)