開発許可を受けた者に対する譲渡要件を満たさないと判断、棄却
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:03/21/2017  提供元:21C・TFフォーラム



 受益者等課税信託の信託受益権が付された信託財産の土地等が開発許可を受けたことに伴って譲渡された場合にも、優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の課税特例の適用があるか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、開発許可を受けたのは不動産信託の受益者としての権利の譲受人ではないことを理由に、課税特例の適用はないと判断、審査請求を斥けた。

 この事件は、審査請求人らが、不動産信託の受益者としての権利を譲渡したことを受け、その譲渡が租税特別措置法31条の2が定める「優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例」の適用が認められる優良住宅地等のための譲渡に該当すると判断して同特例を適用して申告したのが発端となった。

 これに対して原処分庁が、譲渡が「開発許可…を受けて住宅建設の用に供される一団の宅地…の造成を行う法人…に対する土地等の譲渡」の要件を満たさないと判断して特例の適用を否認、更正処分等をしてきたため、請求人らがその全部取消しを求めて審査請求したという事案である。

 つまり請求人らは、信託法16条(信託財産の範囲)及び所得税法13条(信託財産に属する資産及び負債並びに信託財産に帰せられる収益及び費用の帰属)の規定からすると、信託財産に関する受託者の行為は受益者の行為と同一人格の行為であるとみなされるため、信託の受託者が都市計画法29条(開発行為の許可)に基づく開発許可を取得すれば、その許可を受けた地位は、信託受益権が譲渡された場合の受益者である譲受人も有するというべきであるから、「開発許可を受けて住宅建設の用に供される一団の宅地の造成を行う」法人に該当するなどと主張して、原処分の取消しを求めたわけだ。

 しかし裁決は、同特例は本来課されるべき租税を政策的な見地から特に軽減するものであるから、租税公平主義に照らし、その解釈は条文の文言に即して厳格にされるべきであり、条文の文言を離れてみだりに拡張解釈や類推解釈をすることは許されないと指摘。その結果、対象土地に係る信託受益権の譲渡であり、受益権の譲受人自身が開発許可を取得していない以上は、開発許可を受けた者に対する譲渡としての要件を満たさないことから、同特例の適用を受けることはできないと判断、審査請求を棄却した。

(2016.06.03国税不服審判所裁決)