大商、軽減税率の導入に反対する緊急要望を表明
カテゴリ:03.消費税 トピック
作成日:06/25/2014  提供元:21C・TFフォーラム



 去る6月5日に与党から消費税の軽減税率の導入に向けた具体案が示されたが、大阪商工会議所は19日、いずれの案を採用した場合でも、中小企業にとっては事務負担の著しい増大が必至であるほか、税率の線引きを巡り取引先・顧客・税務当局との間でトラブルが生じる可能性も高として、軽減税率の導入に反対する緊急要望を表明した。緊急要望は、内閣府や財務省、経済産業省、自民党など関係各機関に提出された。

 緊急要望によると、そのほか、簡易課税制度の維持が実質的に困難になるとともに、免税事業者が取引から排除される懸念があるなど、中小企業に対する悪影響が特に危惧される。加えて、軽減税率の導入によって社会保障財源が毀損され、消費税率引上げの本来の目的である持続可能な社会保障制度の構築も危うくなるものと考えられる。こうした観点から、具体的に危惧する理由を示した上で、消費税の軽減税率の導入に強く反対する考えを示した。

 まず、対象品目の線引きについては、(与党が提示した)飲食料品に関する8種類の線引き案のいずれの案を採用した場合でも、その線引きを巡り取引先・顧客・税務当局とのトラブルが発生する可能性が高い。とりわけ人的資源に乏しい中小・小規模企業においては、対象品目とその基準を正確に把握し、顧客の納得を得ることは困難であり、結果として消費税を適正に価格転嫁できない事態も懸念され、到底受け入れられない、とした。

 次に、提示された4つの区分経理案はいずれも、新たに区分経理が必要となり、中小企業に多大な事務負担を強いる。加えて、与党案の「EU型インボイス方式」等が導入されれば、免税事業者が取引から排除される可能性が高い。また、簡易課税制度が複雑化し、実質的に維持が困難になることは必至。中小企業とりわけ小規模・零細企業に過度な事務負担を強いることから、到底容認できないとの反対理由を示した。

 最後に、そもそも今回の消費税率引上げの本来の目的は、急速に増大する社会保障財源を確保し、制度の安定を図ることにあると指摘。しかし、軽減税率の導入には、飲食料品だけでも最大3.3兆円の財源が必要となるうえ、一旦導入されれば、対象品目が拡大する可能性も高い。社会保障財源が毀損されれば、消費税率の更なる引上げや給付抑制が避けられない、との社会保障財源を毀損する懸念を示している。

 なお、消費増税に伴う低所得者対策としては、真に支援が必要な対象者に限定した給付措置を別途検討するよう要望した。