マンションの修繕積立金の取扱いを明確化
カテゴリ:02.所得税 トピック
作成日:12/09/2013  提供元:21C・TFフォーラム



 不動産所得に係る必要経費として計上できる費用は、1)債務の成立、2)事実の発生、3)金額を合理的に算定できること、の3要件を全て満たしたものとされる。そこで、賃貸の用に供するためのマンションを取得後、区分所有者としてマンションの管理組合に対し毎月支払う修繕積立金は、上記の2)事実の発生の要件を満たしていないため、原則、不動産所得の計算上、実際に修繕等が行われその修繕等が完了した日の属する年分の必要経費になるとされている。

 しかし、一定の要件を満たす場合には、支払われた年分の必要経費に算入しても差し支えないことが、国税庁がホームページ上で公開している質疑応答事例の新規追加項目で明らかになった。この取扱いは、従前の内容を変更したものではなく、明確化を行ったもの。

 修繕積立金は、マンションの共用部分に対する将来の大規模修繕等の費用の額に充てるために長期間、計画的に積み立てられる。したがって、実際に修繕等が行われていない限り、具体的な給付原因となる事実は発生せず、原則的には、管理組合への支払期日の属する年分の必要経費には算入されず、実際に修繕等が行われ、その費用に充てられた部分の金額についてのみ、その修繕等が完了した日の属する年分の必要経費に算入される。

 一方、修繕積立金は区分所有者となった時点で、管理組合への納付義務が生じるとともに、管理規約に基づいて納入した修繕積立金は、管理組合が解散しない限り区分所有者へ返還されないことが一般的だ。そこで、修繕積立金の支払がマンション標準管理規約に沿った適正な管理規約に従い、一定要件を満たす場合には、その修繕積立金について、その支払期日の属する年分の必要経費に算入しても差し支えないものと考えられている。

 一定要件とは、1)区分所有者は、管理組合に対して修繕積立金の支払義務を負うことになること、2)管理組合は、支払を受けた修繕積立金について、区分所有者への返還義務を有しないこと、3)修繕積立金は、将来の修繕等のためにのみ使用され、他へ流用されるものでないこと、4)修繕積立金の額は、長期修繕計画に基づき各区分所有者の共有持分に応じて、合理的な方法により算出されていること、の4つを全て満たすこと。

 したがって、国税庁の質疑応答事例では、賃貸用マンションの修繕積立金の取扱いについては、原則として実際に修繕等が行われ、その修繕等が完了した日の属する年分の必要経費になるが、上記1)から4)にかけてのいずれの要件も満たす場合には、支払期日の属する年分の必要経費に算入して差し支えないことを明らかにしている。