社会保険診療報酬特例は実額計算で有利・不利を判定
カテゴリ:02.所得税 トピック
作成日:07/27/2016  提供元:21C・TFフォーラム



 社会保険診療報酬課税の特例とは、社会保険診療報酬に係る費用として必要経費に算入する金額を、実際に発生した実額ではなく、一定の経費率を乗じて算出した概算経費が認められるものだ。具体的には、医業又は歯科医業を営む個人が、社会保険診療報酬が5000万円以下であり、かつ、その個人が営む医業又は歯科医業から生ずる事業所得に係る総収入金額に算入すべき金額の合計額が7000万円以下であるときに適用できる。

 必要経費率はその社会保険診療報酬に係る収入の階層に応じて、2500万円以下の場合の72%から4000万円超5000万円以下の場合の57%まで4段階に区分。例えば、年間の社会保険診療報酬が4000万円で、その社会保険診療報酬に係る実額経費が2000万円の場合、社会保険診療報酬に係る概算経費は2770万円(4000万円×62%+290万円)となり、実額経費と比べて所得税計算上はかなり有利なものとなる。

 ところが、事業所得の計算上の資産損失などが生じた場合は一概に有利とはいえなくなる。例えば、心電図の機械や内視鏡などの医療器具が壊れて除却した場合など、通常は資産損失として計上できるものなども、この特例を選択した場合は、これらの資産損失・減価償却費、専従者給与、材料・消耗品等仕入、貸倒損失などの一切が社会保険診療報酬課税の特例経費に含まれることになるので、追加での費用計上は認められていない。

 そこで、このケースなどは、実額計算をして有利・不利の判定を行い、実額計算のほうが有利であれば、この特例課税は適用しないで計算することができる。したがって、いつでもこの判定ができるように、概算経費率の計算だけでなく、実額計算も常にしておくことが肝要といえる。そのためにも、帳簿、領収書、請求書等も常に保存・管理・記録しておくことが必要なのは言うまでもない。

 なお、概算経費を採用する場合でも、社会保険診療報酬以外の収入に対応する必要経費は実額によらねばならない。また、医療法人にも概算経費の制度はあるが、通常実額経費が概算経費を上回ることはないため、活用事例は多くはないとみられている。医療法人の場合は、院長個人に対する役員給与も実額経費として計上されるため、実額経費が個人開業医などと比べて多くなるためだ。