未分割の相続財産の課税価格の計算は穴埋方式によるのが相当
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:03/22/2016  提供元:21C・TFフォーラム



 未分割の遺産に係る相続税の課税価格をいわゆる穴埋方式、積上方式のいずれで計算すべきかの判断が争われた事件で国税不服審判所は、原処分庁の主張どおり、穴埋方式によって計算するのが相当であると判断、審査請求を棄却した。

 この事件は、審査請求人らが、相続財産の一部が未分割の場合の相続税の課税価格の計算の際、未分割の財産並びに債務及び葬式費用に法定相続分の割合を乗じた価額及び金額により課税価格を計算して相続税の申告をしたところ、原処分庁が、1)未分割の財産は穴埋方式によって計算すべきであり、2)債務の金額は請求人らの負担に属する部分がないため控除は認められないと否認、更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしてきた。

 そこで請求人らが、1)未分割の財産に対して何ら権利行使をすることができず、実質的担税力を欠いているなどの個別事情があるため積上方式で計算すべきであり、2)債務及び葬式費用は、共同相続人各人の負担金額が確定していない上、遺言による相続分の指定もないことから、法定相続分の割合を乗じた金額を控除すべきであると主張、更正処分等の一部取消しを求めて審査請求したという事案である。

 しかし裁決は、相続財産の一部が分割されたことによって相続財産全体に対する各共同相続人の法定相続分の割合が変更されることはないから、各共同相続人は他の共同相続人に対し、相続財産全体に対する自己の相続分に応じた価額相当分から既に分割を受けた財産の価額を控除した価額相当分について権利を主張することができると指摘。

 その結果、相続税法55条の「民法上の相続分の割合に従って財産を取得したものとして課税価格を計算する」とは、各共同相続人が相続財産全体に対する自己の相続分に応じた価額相当分から既に分割を受けた財産の価額を控除した残りの価額相当分を取得したものとして計算する方法、すなわち穴埋方式により課税価格を計算すると解するのが相当であると判断、審査請求を棄却している。

(国税不服審判2015.06.03所裁決)