相続対策としての「相続放棄」、ココに注意!
カテゴリ:05.相続・贈与税 トピック
作成日:07/18/2013  提供元:21C・TFフォーラム



 相続対策としての「相続放棄」に静かな関心が寄せられている。債務を抱えて亡くなる高齢者が増える中で相続放棄は増加傾向。裁判所の司法統計によると、平成23年度中に家庭裁判所に持ち込まれた相続放棄事案は16万6463件と、20年前に比べて3倍以上となっている。

 平成25年度税制改正の基礎控除引下げにより相続税の対象者が拡大することで、相続放棄の件数は更に増えるものとみられているが、間違いやすいポイントも多いので注意が必要だ。

 例えば残った相続人による相続税の計算。相続放棄があると相続人数が減るため、相続税計算で控除できる基礎控除の額が変わってくると思いがちだが、これは間違い。相続税の基礎控除は「5千万円+1千万円×法定相続人数」(現行)とされているが、ここでいう「法定相続人数」には相続放棄した人も含まれる。

 相続放棄する人が、故人が被保険者として加入していた生命保険の保険金受取人となっている場合にはさらに注意が必要。相続放棄した場合でも、自分が受取人となっている生命保険金は受け取ることができる。民法上、生命保険金は「相続財産」ではなく「受取人の固有の財産」とされているためだ。

 ここで「受取人固有の財産なら相続税はかからないのでは」と思ってしまいがちだが、税法はそんなに甘くない。相続税法では保険金を「みなし相続財産」として相続税の課税対象としているため、相続放棄した人が生命保険金を受け取った場合は、遺贈により生命保険金を受け取ったものとして相続税計算をすることになる。

 生命保険の非課税枠計算にも注意が必要。みなし相続財産である生命保険金には、「500万円×法定相続人数」という非課税枠が設けられており、ここでいう「法定相続人」には相続放棄した人も含まれる。ただし、相続放棄した本人が受取人となっている保険金については非課税枠の適用はないため、全額が相続税計算の対象となってくる。

 相続税の基礎控除引下げは平成27年1月以後の相続からの適用。相続税対策の一環として相続放棄を検討している場合は、負債も含めた資産状況を把握し、税務上の取扱いを整理しておく必要がある。