「三世代同居リフォーム減税」に疑問の声
カテゴリ:02.所得税 トピック
作成日:07/01/2016  提供元:21C・TFフォーラム



 平成28年度税制改正で創設された「三世代同居リフォーム減税」を疑問視する声が絶えない。三世代同居リフォーム減税とは、自分が所有する家屋に三世代同居に対応する改修工事を行い、平成28年4月1日から平成31年6月30日までの間に居住の用に供した場合に、所得税の税額控除が受けられるというもの。工事によりキッチン、浴室、トイレ、玄関のいずれか2つ以上が複数となり、工事費用が50万円超となるケースが対象となる。

 自己資金による工事だけでなくローンを組んで工事するケースにも対応している。5年以上のローンを組んで三世代同居リフォーム工事を行った場合、年末ローン残高250万円の2%が5年間にわたり所得税から控除できる(最大25万円)。自己資金によるリフォームの場合は、三世代同居リフォーム工事の標準的な費用の額の10%相当額(上限25万円)をその年の所得税から控除できる。

 しかし、同特例については疑問の声も多い。政府内でも創設前から「対象者や効果が不透明」、「人生観や価値観に踏み込む税制はなじまない」など反対意見が多く、平成20年から断続的に内閣府の要望として上げながらも見送られてきた。野党からは「三世代が同居できるような豪邸に住める人を優遇するのか」、「実際に三世代が住んでいることを確認もせずに減税するのか」という声も出ている。

 同特例の適用には、三世代同居リフォーム工事であることの証明が必要とされており、証明書は「住宅の品質確保の促進等に関する法律に規定する登録住宅性能評価機関」、「建築基準法に規定する指定確認検査機関」、「建築士法の規定により登録された建築士事務所に所属する建築士」、「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律の規定による指定を受けた住宅瑕疵担保責任保険法人」のいずれかが発行することとされているが、実際に三世代で住んでいるのかを特例の適用期間中に確認する仕組みはない。

 安倍首相が掲げる「一億総括役社会」の実現に向けた少子化対策の一環として「子育てしやすい環境の整備=三世帯同居のフォロー」が強く打ち出され実現に至ったが、肝心の子育て世代、親世代の需要があるかどうかも不透明だ。

 内閣府が実施した「理想の家族の住まい方」についての意識調査によると、30代女性で三世代同居を希望するのはわずか10.7%。20代女性になると8.6%にまで下がる。祖父母世代も生活習慣の違いなどを理由に同居より「近居」を希望する声が増えているという。

 富裕層の優遇という声に対しては、自己資金型の所得要件を「3千万円以下」に設定することで対応したものの、三世代同居に対するニーズとのズレは修正できないまま今年4月に制度がスタートした。創設による減収見込額は2千億円。同特例の〝費用対効果〟に注目が集まる。