代表取締役就任前は役員とはみなされないと判断、全部取消し
カテゴリ:01.法人税 裁決・判例
作成日:10/25/2016  提供元:21C・TFフォーラム



 同族法人の代表取締役が、代表取締役就任前に既に法人税法上の役員だったか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、代表取締役として署名押印した契約書等があるからといって単に代表者でない者が契約当事者になっているに過ぎず、その内容も重要な業務に係るものとはいえないことから、代表取締役に就任する前から法人税法上の役員に該当していたとは言えないと判断、原処分を全部取り消す裁決を言い渡した。

 この事件は、損害保険代理業及び生命保険媒介業を業とする同族会社が、代表取締役に支払った業務委託契約に基づく報酬を損金に算入して法人税等の申告をしたところ、原処分庁が代表取締役に就任する前から法人税法上の役員だったと認定した上で、その報酬は損金不算入の役員給与に該当すると判断、法人税の更正処分等をしてきたのが発端。

 これに対して同族法人側が、代表取締役に就任する前は法人税法上の役員には該当しないと反証、原処分の全部取消しを求めて審査請求したという事案である。原処分庁側は、現代表者が代表取締役への就任前に、発行済株式の50%超を保有し、代表取締役として署名押印している契約書面があることなどを理由に、法人税法施行令7条が定める経営に従事している者に該当し、法人税法上の役員つまりみなし役員に該当する旨主張した。

 しかし裁決は、代表取締役として署名押印している契約書面があるからといって代表者でない者が契約当事者になっているに過ぎず、その内容も重要な業務に係るものとはいえないから、経営に従事していたことを裏付けるものとまでは認められないと指摘。また、税務調査時に同族法人から提出された文書及び現代表取締役の申述内容からは、代表取締役への就任前に人事や資金計画に関わっていたことについて、いつの時点においていかなる役割を担っていたのか明らかではなく、これを具体的に裏付ける証拠の収集もなされていないとも指摘した。

 そうした指摘の結果、原処分庁の主張をもって、現代表者が経営に従事していたと認めるには足りないことから、代表取締役に就任する前に法人税法の役員に該当するとはいえないと判断、原処分を全部取り消している。

(2016.03.02国税不服審判所裁決)。