馬券の払戻金は雑所得、馬券購入費用は必要経費と判示
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:06/11/2013  提供元:21C・TFフォーラム



 給与所得の他に競馬の払戻金があったにもかかわらず、無申告だったため所得税法違反として告発された事件で大阪地裁(西田真基裁判長)は、馬券購入行為から生じた所得は一時所得ではなく雑所得に該当するため、当たり馬券の購入費用は払戻金を得るための必要経費に該当すると判示、納税者側の主張を認める判決を下した。しかし、単純無申告犯は成立すると判示して懲役2ヵ月、執行猶予2年の判決を言い渡している。

 この事件は、給与所得の他に多額の馬券投票券の払戻金があったにもかかわらず、3年分の所得が無申告だったため、所得税法違反を理由に告発されたのが発端になった事件だが、被告は馬券予想ソフトを用いて馬券の自動購入、払戻金の受取等を行うというスタイルを繰り返し、3年間の馬券購入金額は28億円を超えていた。
 
 つまり、払戻金が一時所得となる一般的な馬券購入行為と異なり、大量で継続的、機械的、かつ利益を得ることに特化したものでもあったわけだ。これに対して検察官側は、馬券購入行為は払戻金を得られるか否かが偶然の作用によるという射倖性が極めて強い行為であり、社会通念上、営利を目的とする継続的行為と位置付けるのは失当と指摘して、その違法性を主張していた。
 
 判決は、馬券購入行為は娯楽の域にとどまるものとは言い難く、恒常的に所得を生じさせ得るものであったから、払戻金はその所得が質的に変化して源泉性を認めるに足りる程度の継続性、恒常性を獲得していると認定して、雑所得に分類されると判示。また、当たり馬券の購入費用は払戻金を得るために「直接に要した費用」に当たるのは明らかで、外れ馬券の購入費用もその他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用として必要経費に該当するとも判示した。
 
 しかし、無申告だったことについては正当な理由が認められず、加罰的違法性を欠くとも言えないことから、期待可能性がないともいえないと判断、懲役2ヵ月、執行猶予2年の判決を言い渡している。この判決を受けた検察側は控訴した。

(2013.05.23 大阪地裁判決、平成23年(わ)第625号)