ふるさと納税の増加理由は返礼品の充実が第一位
カテゴリ:16.その他 トピック
作成日:07/28/2016  提供元:21C・TFフォーラム



 ニッセイ基礎研究所が発表した「やっぱり返礼品が一番」と題した基礎研レターは、総務省が今年6月に公表した「ふるさと納税に関する現況調査」を分析して、ふるさと納税の受入額が増えた理由は返礼品の充実が第一位としている。平成27年度のふるさと納税受入額は1653億円と、前年度の4倍以上となった。平27年度から、ふるさと納税枠の引上げ、ふるさと納税ワンストップ特例制度が創設された効果が大きいとみている。

 事実、同調査結果によると、ふるさと納税の受入額が増加した主な理由として44.2%の団体が、「上記の制度拡充」を挙げているが、それをはるかに上回る56.9%の団体が「返礼品の充実」を挙げている。与えられた効果(制度の拡充)よりも、自ら勝ち取った効果(返礼品の充実)を高く評価するといったバイアスがあるかもしれないが、寄附者の大多数が返礼品目当てであることを、担当者は実感していると推測している。

 返礼品を送付している地方自治体は全体の90.5%に及ぶ。更に、返礼品を送付していない地方自治体のうち、半数以上が今後返礼品送付を検討していると回答。2年前のサンプリング調査では返礼品を送付している都道府県は全体の50%程度だった。前回返礼品を送付していなかった都道府県の返礼品送付状況を確認した結果、この2年間に返礼品を送付するようになった都道府県が少なくなかった。

 他方、ふるさと納税制度による「地方創生」のための実質予算を確認したところ、平成27年度の経費総額は793億円(ふるさと納税受入額1653億円×経費率48%相当)となった。ふるさと納税を行う納税者の寄附先数の平均が5と仮定すると、平成27年度の受入件数が726万件なので、145万人弱が、自己負担額2000円だけ余分に、国もしくは自治体に納めたことになる。

 しかし、寄附者が負担するのは、793億円のうち29億円程度(145万人×2000円)に過ぎない。そして、差額は国が受け取るはずだった所得税や他の自治体が受け取るはずだった住民税からの移動に他ならない。国全体で捉えると、差額の764億円の持ち出しである。つまり、平成27年度におけるふるさと納税制度運営に係る実質予算が764億円だったと言い換えられる。

 経費は金額の多寡ではなく、生み出される便益との比較で判断されるべきだ。事実、公共事業の評価手法の一つに費用便益分析がある。公共事業がもたらす便益の現在価値をその費用の現在価値で割った値を費用便益比とし、それが高いほどよいと考える手法で、1を超えるとその事業は妥当と判断される。ふるさと納税は、平成27年度単年度で、少なくとも、1300億円(764億円の1.7倍相当)の便益があったことを願いたいとしている。

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