国税庁、相続税への推計課税導入に虎視眈々
カテゴリ:05.相続・贈与税 トピック
作成日:05/02/2013  提供元:21C・TFフォーラム



 テレビや雑誌で数多く紹介され傍目にも繁盛しているのに、申告所得は異常に少ないラーメン店。税務調査に入ったものの帳簿も領収書もない――。そんな時、税務署では箸の仕入数や麺の玉数などから売上を推定し、申告内容との差額に課税することがある。国税当局の伝家の宝刀、「推計課税」だ。

 具体的な判断基準などは一切公表されておらず、その不透明な不気味さも加わって恐れられている課税方法だが、法的に認められているのは法人税と所得税のみ(法人税法131条、所得税法156条)。それも白色申告者のみと極めて狭い範囲に限られている。ところが最近になって、国税庁がこの強引な課税手法を相続税にも使いたいと言い出した。

 現在、相続開始前3年以内に被相続人から贈与された財産については、相続財産に加算するという取扱いがあるが、相続開始前に被相続人の銀行口座から大金が引き出されているものの、それがどこへ消えたかわからないという場合、税務署は手も足も出ない。

 そこで平成25年度税制改正に向けた独自の意見として「相続税の課税財産の範囲に関する推定規定の新設」を入れ込んだ。具体的には、「相続開始以前の一定期間中に、被相続人の財産を処分または被相続人が債務を負担したもので、その使途が客観的に明白でなく、かつ、その合計額が一定金額以上となる場合には、これを相続人が相続したものと推定し、相続税の課税価格に算入する制度を創設する」というもの。

 説得材料として「期間」と「金額」で対象を絞り込んだお隣韓国の成功例も引き合いに出しているが、今年度改正では見送りとなった。

 しかし国税庁がこれで引き下がるとは考えにくい。税率構造の見直しや基礎控除の引下げが行われるなど相続税への課税強化路線にある中、国税庁としてはなんとしても推計課税を導入したいはずであり、平成26年度税制改正に向けた要望に再び載せてくる可能性は大。資産家としては資産の動きを明確にしておく必要がありそうだ。