通則法改正で「反面調査」が増加中
カテゴリ:08.国税通則法 トピック
作成日:07/24/2014  提供元:21C・TFフォーラム



 税務署の反面調査が増加傾向にある。反面調査とは、税務調査の際に帳簿書類などに不備があると思われる場合に、調査対象者の取引先や関連会社、債権債務者、親類縁者などに取引の実態を確認するもの。質問検査権に基づいているため受け手には対応義務があり、拒否した場合には罰則もある。その反面調査がいま、かつてないほど重要視され、フル稼働しているという。その背景にあるのが改正国税通則法だ。

 昨年からスタートしている改正国税通則法では、それまで各税目に分散されていた「質問検査権」の規定が国税通則法に集約され、法人税については本体調査先のみにしか認められていなかった「帳簿書類その他の物件」の調査が、反面調査にまで拡大された。

 また税務調査の事前通知の義務が明確化されたが、反面調査はこの事前通知の対象外となっている。「常識の範囲内で連絡はするが、取引先と通謀の恐れがある場合は連絡しない」(国税調査官)。さらに、税務署が更正などの不利益処分を行う場合にその理由を調査先に示す「理由付記」が原則義務化され、証拠固めが重要になってきたという事情もある。

 理由付記の不備により更正を認めないとした国税不服審判所の裁決も出ていることから、より詳細な証拠集めが欠かせなくなってきているのだ。「手っ取り早く証拠集めをするには反面調査が一番。事前通知も必要ないためおのずと重点が置かれる」(同)。

 しかし反面調査の乱発は、本体調査の対象である会社にとって死活問題だ。ヘタをすると取引先の信用を失い経営に支障をきたしかねない。対応策はないのだろうか。この点、「情報開示を徹底すれば反面調査の必要はなくなる」(国税OB税理士)という見方もあるが、一方で、反面調査は「客観的に見てやむを得ないと認められる場合に限って行うこと」(昭和51年・国税庁「税務運営方針」)とされていることから、「状況に応じて『やむを得ない』と認められる理由の説明を求める必要もあるだろう」(都内税理士)という意見もある。調査の現場で納税者はどうしても受け身だが、大切な取引先を守るため、ひいては自社を守るために、出来ることはすべてしておきたい。