消費増税1年半延期、軽減税率は平成29年度から導入
カテゴリ:03.消費税 トピック
作成日:12/01/2014  提供元:21C・TFフォーラム



 安倍晋三首相が、消費税率10%への引上げを、予定していた平成27年10月から1年半延期し、平成29年4月からとする意向を表明した。この増税延期の判断により、今後の税制改正にも大きな影響が出てくるとみられている。また、増税延期について、国民に信を問うため、衆院を解散、総選挙を行う影響から、税制改正大綱は、例年12月中旬ごろに決定されるが、平成27年度は1月上旬となる見通しだ。

 消費税の軽減税率の導入については、平成26年度税制改正大綱において「消費税率10%時に導入する」とされていたが、増税延期を受けて、自民、公明両党は与党税制協議会で「平成29年度からの導入を目指す」と合意文書に明記した。軽減税率制度については、「平成29年度からの導入を目指して、対象品目、区分経理、安定財源等について早急に具体的な検討を進める」としている。

 平成27年度税制改正は消費増税と連動する検討項目が多く、平成26年度税制改正大綱において消費税率10%引上げ時に廃止するとされていた自動車取得税は、平成29年3月末まで存続する見通し。また、自動車取得税を廃止する代わりに、燃費性能に応じて取得額の最大3%を課税する「燃費課税」も、27年度改正で具体的な結論を得るとされていたが、消費増税の延期に伴い燃費課税の導入も先送りとなる公算が強い。

 法人実効税率については、数年間で約35%から20%台に引き下げるため、平成27年度と28年度に2%台後半引き下げる方針だが、初年度の引下げ幅は増税先送りの影響を避けられない可能性がある。また、本年末で期限切れとなる、住宅取得資金のための最大1000万円までの贈与を非課税とする措置も、延長される予定だが、国土交通省が要望する非課税枠3000万円への拡充は難しい状況となる。

 そのほか、平成26年度税制改正大綱において、税率10%段階で法人住民税法人割の地方交付税原資化をさらに進め、地方法人特別税・譲与税を廃止するとともに他の偏在是正措置を講じるとしていた地方法人課税の偏在是正も、27年度改正では見送られることになりそうだ。なお、今回の増税延期は、税制にとどまらず、増税で生まれる財源での対応を予定していた、年金の受給資格の短縮(25年→10年)や低所得高齢者・障害者等への福祉的給付など「社会保障の充実」にも影響が及ぶことになる。