婚外子相続「違憲判決」が寡婦控除に影響
カテゴリ:02.所得税 トピック
作成日:09/19/2013  提供元:21C・TFフォーラム



 結婚していない男女の間に生まれた婚外子の遺産相続分を、結婚している夫婦の子の半分と定めた民法の規定が最高裁で「違憲」と判断されたことを受け、婚外子を事実上差別しているその他の制度にも、見直しに向けた期待が寄せられている。とくに注目されているのは寡婦控除だ。

 寡婦控除は、夫と死別または離婚した女性が受けられる所得税法上の優遇措置。収入や扶養親族の有無によって、27万円か35万円が所得から控除される。

 ただし、同控除の対象となる「寡婦」は、1)夫と死別もしくは離婚した後婚姻をしていない人、または夫の生死が明らかでない一定の人で、扶養親族または生計を一にする子がいる人、2)夫と死別した後婚姻をしていない人、または夫の生死が明らかでない一定の人で、合計所得金額が500万円以下の人――とされており、いずれも「婚姻」を前提としているため、一度も結婚したことがない非婚の女性は同控除の対象外となっている。

 寡婦控除の適用がないと、所得税の負担が増えるだけでなく、寡婦控除後の所得税をもとに算定される住民税や国民健康保険料、保育料、さらには公営住宅の入居資格やその家賃などにも影響が出てくるため、非婚女性はかなりの経済的負担増を強いられることになる。

 この問題について日本弁護士会連合会は今年1月、非婚の母を寡婦とみなして保育料や公営住宅の賃料などを減免し、経済的苦境を救済するよう、国や東京都などに対して要望書を提出している。非婚のシングルマザー3人が、寡婦控除が適用されないのは人権侵害だとして日弁連に救済を申し立てていたもの。また自身の論文が日弁連の要望書にも引用されている国士舘大学教授の酒井克彦氏(国税OB)は、「非婚の母であった女性がその後結婚し、離婚をすることで寡婦控除が認められるのであれば、結婚・離婚をしなかった女性との間に実質的な担税力の差はない。婚姻届提出の有無によって税負担に差を設けることには疑問も覚える」と指摘する。

 今回の、婚外子の相続に関する違憲判決を機に、寡婦控除をはじめとする婚外子差別制度の見直しを求める声は各方面から挙がっており、今後の議論に注目が集まる。