新会社役員賠償保険の保険料の給与課税は不要
カテゴリ:02.所得税 トピック
作成日:03/04/2016  提供元:21C・TFフォーラム



国税庁は、これまで給与課税の対象とされていた会社負担の会社役員賠償保険の保険料の税務上の取扱いについて、一定の手続きを行うことにより会社法上適法に負担した場合には、役員個人に対する給与課税を行う必要はない旨を明らかにした。経済産業省からの照会に回答したもので、一定の手続きとして、1)取締役会の承認、2)社外取締役が過半数の構成員である任意の委員会の同意又は社外取締役全員の同意の取得、を挙げている。

 会社役員賠償責任保険は、会社法(商法)上の問題に配慮し、これまで、普通保険約款等において、「株主代表訴訟敗訴時担保部分」を免責する旨の条項を設けた上で、別途、その部分を保険対象に含める旨の特約を付帯する形態で販売されてきた。また、株主代表訴訟担保特約の保険料についても、会社法上の問題に配慮し、これを会社が負担した場合には、会社から役員に対して経済的利益の供与があったものとして給与課税の対象とされていた。

 このような状況のなか、経産省の「コーポレート・ガバナンス・システムの在り方に関する研究会」が昨年7月24日に取りまとめた報告書「コーポレート・ガバナンスの実践~企業価値向上に向けたインセンティブと改革~」においては、会社が利益相反の問題を解消するための上記の1)、2)の手続きを行えば、会社が株主代表訴訟敗訴時担保部分に係る保険料を会社法上適法に負担することができるとの解釈が示された。

 この会社法の解釈の明確化を踏まえると、会社が株主代表訴訟敗訴時担保部分に係る保険料を会社法上適法に負担できる場合には、その部分を特約として区分する必要がなくなることから、普通保険約款等において株主代表訴訟敗訴時担保部分を免責する旨の条項を設けない新たな会社役員賠償責任保険の販売が想定される。以上を踏まえ、経産省は、今後の会社役員賠償責任保険の保険料の税務上の取扱いを、国税庁に照会した。

 これに対し国税庁は、新たな会社役員賠償責任保険の保険料を会社が上記1)及び2)の手続きを行うことにより会社法上適法に負担した場合には、役員に対する経済的利益の供与はないと考えられることから、役員個人に対する給与課税を行う必要はないこと、また、それ以外の会社役員賠償責任保険の保険料を会社が負担した場合には、従前の取扱いのとおり、役員個人に対する給与課税を行う必要がある、との見解を示している。

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