一時所得の範囲、通達改正案に反論多数
カテゴリ:02.所得税 トピック
作成日:04/09/2015  提供元:21C・TFフォーラム



 一時所得の範囲を定めた通達(所得税基本通達34-1)の改正をめぐる議論が過熱している。これは、さきごろ下された馬券の払戻金の所得区分をめぐる裁判の最高裁判決を受けたもの。裁判では、馬券の払戻金は一時所得に当たるとし、必要経費は「直接要した費用」である当たり馬券のみで、外れ馬券は含まれないと主張する税務署に対し、一審、二審とも営利を目的とする継続的行為による場合は雑所得に当たり、外れ馬券も必要経費に含まれると判断。最高裁もこれを支持した。

 この判決を受け国税庁は通達改正に着手。パブリックコメント募集にあたり改正案を示したが、その内容に多くの有識者から疑問の声が上がっている。

 改正案は、現行の通達にカッコ書きや注意書きで適用除外を補足するスタイル。具体的には、一時所得の対象となる「競馬の馬券の払戻金、競輪の車券の払戻金等」の後に「(営利を目的とする継続的行為から生じたものを除く)」とするカッコ書きを入れ込み、さらに注意書きとして「馬券を自動的に購入するソフトウェアを使用して独自の条件設定と計算式に基づいてインターネットを介して長期間にわたり多数回かつ頻繁に個々の馬券の的中に着目しない網羅的な購入をして当たり馬券の払戻金を得ることにより多額の利益を恒常的に上げ、一連の馬券の購入が一体の経済活動の実態を有することが客観的に明らかである場合の競馬の馬券の払戻金に係る所得は、営利を目的とする継続的行為から生じた所得として雑所得に該当する」と書き添えている。

 この改正案が示されると、多くの有識者から「対象が狭すぎる」との声が上がった。最高裁判決では、期間、回数、頻度その他の態様、利益発生の規模、期間その他の状況等の事情を綜合考慮して「営利を目的とする継続的行為」か否かを判断するとしているが、「改正案は『ソフトウェアを使用して』、『インターネットを介して』など要件を絞り込み過ぎていて最高裁判決の趣旨が反映されていない」、「実際に生じた利益以上に課税される、あるいはトータルでは損をしているにもかかわらず、課税が生じるという著しく不当な結論を何ら回避できない」など、疑問視する声も少なくない。

 パブリックコメントの募集は4月24日まで。一般からの意見がどれだけ新通達に反映されるかが注目される。