職務発明した社員に支払う補償金は「雑所得」
カテゴリ:02.所得税 トピック
作成日:02/23/2017  提供元:21C・TFフォーラム



 職務発明をした社員に支払う補償金は雑所得扱い―。昨年の特許法改正を受けた職務発明の税務上の取扱いについて、国税当局が見解を示した。これは、職務発明による特許を受ける権利を使用者に原始的に帰属させる制度(使用者原始帰属制度)を導入した場合の「相当の利益」に係る税務上の取扱いについての事前照会に対し、名古屋国税局が文書回答したもの。

 職務発明について特許を受ける権利は、かつては発明者(社員等)に帰属し、これを使用者である会社等が承継した場合には「相当の対価」を支払うものとされていた。平成27年の特許法改正によりこの取扱いが一部改正。「使用者原始帰属制度」が導入され、社員の職務発明について、契約、勤務規則などによりあらかじめ会社に特許を受ける権利を取得させることを定めていれば、特許を受ける権利はその発生時から会社に原始的に帰属し、社員は会社から「相当の利益」の支払いを受ける権利を有することとされた。

 照会者は、この使用者原始帰属制度を導入し、「相当の利益」として、特許出願、登録、実施、譲渡などのタイミングで補償金を支払うこととし、その支払いを受ける権利は、社員(発明者)が退職した後も存続し、死亡したときは相続人が承継するものとした。

 本件補償金の税務上の取扱いについては、特許を受ける権利を移転させることにより生じるものでないことから譲渡所得には該当せず、使用人ではなく「発明者」としての地位に基づいて支払いを受けるものであり、退職・死亡後も継続して支払われることから給与所得にも該当せず、職務発明に係る特許を受ける権利を会社に原始的に取得させることによって生じるものであるため臨時・偶発的な所得である一時所得にも該当しないなどとし、いずれにも該当しないことから雑所得に該当すると判断した。

 また、本件補償金は、発明者である社員等が特許権を持たない状態で、「相当の利益を受ける権利」に基づき支払いを受ける金銭であり、工業所有権等の使用料とはいえないため「報酬・料金等」に該当せず源泉徴収をする必要はないとした。

 照会を受けた名古屋国税局は、「照会に係る事実関係を前提とする限り、貴見のとおりで差し支えない」と回答。ただし、照会に係る事実関係が異なる場合や新たな事実が生じた場合は、異なる課税関係が生ずることがあるとしている。

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