税務に影響も、改正特許法の足音近づく
カテゴリ:02.所得税 トピック
作成日:01/07/2016  提供元:21C・TFフォーラム



 社員の職務上の発明(職務発明)を「会社のもの」にできる改正特許法の施行が今年4月に迫っているが、これに関連して税務への影響にも関心が寄せられている。職務発明で問題となりがちなのが、それを利益につなげるために特許出願する権利の対価だ。現行法では、職務発明の特許出願の権利は社員に帰属するため、会社は発明した社員に「相当の対価」を支払って権利を買い取る形になる。

 しかし対価の相場感は立場によって大きく異なり、会社と発明社員の間で争いが絶えなかった。最近では青色発光ダイオード(LED)の発明者で一昨年ノーベル賞を受賞した中村修二カリフォルニア大学教授が、元勤務先の日亜化学工業を相手に対価を求めた特許訴訟が記憶に新しい。一審の東京地裁は日亜化学工業に200億円の発明対価の支払いを命じる判決を下したが、二審で8億4千万円を支払う条件で和解している。

 改正特許法では、社内規定等で「職務発明は会社のもの」と定めておけば、発明の権利は最初から会社に帰属することになる。この場合、会社側は社内規定等で定めた「相当の利益」を発明社員に与える必要がある。「相当の利益」とは金銭だけでなく、昇進などの処遇も含めたもの。社費留学、ストックオプション(株式購入権)、有給休暇、発明についての会社からのライセンス供与――なども想定されており、近く特許庁が具体的な候補を示す方向だ。新規定を設けることで、会社にとってはは職務発明の他社への売却や訴訟などのリスクが減少する。

 改正特許法が税務に与える影響にも関心が寄せられている。現行法では会社が社員から出願権を買い取る形となるため、社員が受け取る金銭は原則として譲渡所得扱い。権利承継後に支給されるものは雑所得扱いとされている。改正後は、「もともと会社のもの」とされる発明に関して、その発明をした社員に「相当の利益」を与えるケースが出てくることになるが、これが職務に対する報酬ということで給与所得に整理されるのか、また雑所得とされるのか、改正特許法に関連する税務取扱いの整備にも注目が集まる。