ASBJの新規テーマ候補に「ASR」の会計処理
カテゴリ:09.企業財務 トピック
作成日:05/09/2014  提供元:21C・TFフォーラム



 企業会計基準委員会(ASBJ、小野行雄委員長)の新規テーマ候補として、「加速型自社株買い」(ASR:Accelerated Share Repurchase)の会計処理が挙がっている。ASRとは、契約を結んだ金融機関から、一度に大量の自社株を取得する手法。米国では取引事例も会計上の定めもあるが、日本ではいずれもない。

 それが最近、「ASR取引についての相談」が監査人に寄せられ、「判断に窮している」という。事実、昨年から自社株取得のニーズは高まっており、取得の「選択肢が広がることは有効」との声も聞く。ただ、「会計基準が見えないと、案件を実施しにくい」ことから、今般、会計処理の検討が要望された次第だ。

 現状、自社株取得は、公開市場における定期的な買い付けが一般的。数回に亘らないと望む株数を取得できないなど時間を要する。こうした問題を解消するツールがASRだ。そのスキームを紹介すると、例えばX社が自社株式100万株の取得を望んだケース。

 1)金融機関がX社株式100万株を貸株で調達、2)4月1日、X社が金融機関からX社株式(自社株式)100万株を時価で取得し対価を支払う。同時に、X社と金融機関との間で、4)を行う契約を締結、3)金融機関は、その後の6ヵ月間に市場より100万株を取得、4)9月30日に2)と3)の価格差相当額をX社と金融機関で現金またはX社株式で決済、5)金融機関は貸株を返済。

 会計上の論点は、2)の自社株式の取得と4)の差額の決済を1つの取引と捉えるか、または2つの取引と捉えるか。また、2つの取引と捉えた場合、4)を損益で処理するか、資本で処理するか、が考えられる。ASBJでは、実務対応専門委員会で評価の上、新規テーマとしての是非を判断する。