人的・物的設備のない絵画の売買は雑所得と裁決
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:04/12/1999  提供元:21C・TFフォーラム



 絵画の売買業務によって生じた所得が事業所得に当たるか、また雑所得のいずれにあたるのかが争われていた事案で、東京国税不服審判所は事業所得を生ずべき事案として社会的客観性を備えたものではないと判断、更正処分の取消請求を棄却した。
 この事案は画廊「K」の屋号で絵画の売買取引業務を行う納税者がその収入を事業所得として申告したところ、原処分庁が絵画業務に係る損失は雑所得の損失であるとして更正処分をしたため、その取消しを求めて審査請求していたというもの。原処分庁の認定は絵画業務の収支が開業以来赤字を続け、営利性・有償性を有した安定収益を得られる可能性が低かったことにポイントがあった。そこで、請求人サイドは赤字を続けてきたのは絵画業務への参入時期の誤り、事業戦略上の判断ミスによるものであり、バブル崩壊に伴う経済激変の時代に黒字転換を果たすのは容易ではなく、原処分庁の主張は結果論であるといわざるを得ないと真っ向から反論、課税処分の取消しを求めていた。
 これに対して、東京国税不服審判所は人的・物的設備が整っていないこと、取引の実態が絵画の購入から売却までのすべてを特定の画廊に任せている点を考えれば、請求人の絵画売買業務に費やす精神的・肉体的労力は低く、自己の危険と計算における企画遂行性の欠如、営利性も欠如していることが認定できると指摘。その結果、請求人が行う絵画の売買業務は事業所得を生ずべきものとして社会的客観性を備えたものには当たらないと判断している。つまり、事業所得を生ずべき事業から生じた所得に該当せず、また他の所得にも該当しないことから、結局、雑所得に該当すると判断、請求を棄却したわけだ。
(東京国税不服審判所、1998.6.25裁決)