贈与契約の成立が認められず、相続財産に含まれないと判示
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:05/28/2002  提供元:21C・TFフォーラム



 米国籍の相続人に対して相続開始前に送金した2000万円相当額が、相続開始前3年内贈与財産として相続税の課税価格に加算されるか否かの判断が争われた事案で、東京地裁(藤山雅行裁判長)は贈与契約自体の存在を推認することはできないと判示、相続税の更正の請求に対する更正すべき理由がない旨の通知処分を取り消した。

 この事件は、被相続人から相続開始前に米国籍の相続人に送金された金銭を相続税の申告の際に、いったん相続財産として申告した後、相続財産に算入したのは誤りだとして更正の請求をしたことが発端になったもの。この更正の請求に対して、原処分庁が更正すべき理由がない旨の通知処分をしたため、その取消しを求めて争われてきた事案だ。

 原処分庁は、財産の所在の判定は、贈与によって取得した時の現況によるとしているが、民法の贈与契約の規定により、書面によらないものであっても贈与契約成立の時であると解釈すべきであるから、贈与契約成立の時と思料される当時の送金された金員の現況は本邦に所在する現金であるから、相続財産に含まれると主張していた。 

 これに対して判決は、原処分庁は贈与契約が相続開始前に成立していたと思料される旨主張するのみで、裏付ける立証がないと示唆。その上で、相続税の課税価格に加算されるには、送金に係る贈与契約が送金以前に成立していたことが必要であり、送金以前の贈与契約の成立は相続税の課税根拠事実にあたると指摘した。しかし、原処分庁の主張には自己の主張を裏付ける立証ができていないのであるから、本邦に所在する財産を取得したとは認められないと判示、国側の主張を一蹴した。当然、国側は控訴に踏み切った。

 (2001.04.18 東京地裁判決、平成13年(行ウ)第231号)