納税の意思があれば“公示逃れ”も過少申告にあらず
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:10/01/2002  提供元:21C・TFフォーラム



 納税額1千万円以上の高額納税者の公示である「長者番付」に名前が載るのを避けるため、申告をせずに後で修正申告した納税者が、所轄税務署による過少申告加算税の課税処分を不服として取消しを求めていた控訴審判決が9月27日に広島高裁であった。判決は「納税者は早い段階で納税の意志を持っており、自発的な納税といえる」として、課税処分を取り消した一審判決を支持している。

 長者番付に載るのを防ぐ、いわゆる“公示逃れ”は、高額納税者の公示対象が3月31日までに提出された申告書に限られることから、当初は所得税額が1千万円を超えない範囲で申告しておいて、4月1日以降に本来の税額で修正申告する手法が一般的だ。しかし、今回の事例は、全く申告せずに後で修正申告しても、「早い段階で納税の意思を持っていること」が分かれば、過少申告加算税などの課税処分は受けないで済むという判断が下されたわけだ。

 「早い段階での納税の意思」の証明は、一見難しそうに思えるが、それこそ税理士に“早めに”確定申告書を作成してもらえば済むものと考えられる。自分で作成しておいて「納税の意思はあった」と主張しても認められないだろうが、客観的な事実として、税理士など第三者に証明してもらえばいい。

 注目されるのは、判決が、修正申告をせざるを得なかった理由があれば期限後申告を認めたことだ。その理由とは、もちろん「プライバシー」にほかならない。今後は、このような“公示逃れ”が、プライバシー上の問題を正当理由として、リスクなく出来るということだから画期的な判例といえる。というよりも、公示制度そのものを見直すべき時期にきている、ということになる。