旺文社事件の控訴審、国が逆転勝訴、藤山判決を厳しく批判
カテゴリ:01.法人税 裁決・判例
作成日:02/17/2004  提供元:21C・TFフォーラム



 オランダに設立した子会社とその関連会社を利用して、増資の際に著しく有利な株式割当てを行った一連の行為が、日本国内法人からの寄附行為に当たるか否かの判断が争われていた事件(いわゆる旺文社事件)で東京高裁(江見弘武裁判長)は、一審の藤山判決の内容を全面的に否定、国側の課税処分を妥当とする逆転判決を下した。

 この事件は、出版業を営む旺文社(旧商号)がオランダに100%出資の子会社(A社)を設立するとともに、同社の持株会社がさらにオランダに100%出資の子会社(B社)を設立、A社の増資の際にB社に著しく有利な価額で株式を割り当てるという節税スキームを実行したことが発端になったもの。しかし、原処分庁が取引の実態は旧旺文社からの寄附行為に当たると認定、更正の上、過少申告加算税の賦課決定処分をしたため、旧旺文社側がその取消しを求めて提訴したわけだ。

 これを受けた原審の東京地裁(藤山雅行裁判長)は資産の無償譲渡、同族会社の行為計算否認規定のいずれにも該当しないと判断、納税者側の主張を全面的に受け入れる判決を下したため、国側が控訴していたという事案だ。

 控訴審は一転、無償の資産の譲渡に当たると認定するとともに、原審の判決というよりも藤山裁判官を強く批判するような形で判決文をまとめ、国側の主張を全面的に認容している。というのも、無償の資産の譲渡を定めた法人税法22条の適用を否定したのは原審が事実認定の責務を果たしていないと批判した上で、さらに関係当事者の意思や行為の結果を全体として見ていないため一部を恣意的に切り取って結論を導いた原審の誹りは免れず、紛争を解決に導くべき裁判所の責任を疎かにしていると厳しく批判しているからだ。

(2004.01.28 東京高裁判決、平成14年(行コ)第1号)